株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
猫の血尿の原因は様々です。赤っぽい色に見えても、実は血液ではないことも…?原因は膀胱炎や尿石症などが多いですが、放置すれば重症化したり、完治するまでの時間が長くなってしまう可能性もあります。 突然赤い血尿が見られたときに何をすればいいか、自宅ですぐにできる対応や治療費の目安についてまとめました。ぜひ愛猫の健康管理に役立ててください。
監修した専門家
株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
動物病院勤務 獣医師
獣医師。公務員獣医師として家畜防疫、牛の改良繁殖に携わる。その後はアミカペットクリニック、アカデメイア動物病院にて小動物臨床に従事。株式会社RABOにてWebコンテンツの監修も行っている。
猫のトイレ砂やペットシーツを交換するとき、赤い血のような色を見つけたらびっくりしますよね。「血が出てる!!」と慌ててしまうかもしれませんが、実は赤い色がつく原因は血液だけではありません。 実は色々なパターンがあるのです。
<色が変わるおしっこのパターン>
血尿:赤血球が混じるおしっこ
血色素尿:赤血球の中にある色素(ヘモグロビン)が混じる尿
筋色素尿:筋肉の中にある色素(ミオグロビン)が混じる尿
混濁尿:細菌感染などなんらかが混ざり、混濁した色の尿
結晶尿:膀胱内で結晶が生成され、砂のようなキラキラが混じる尿
健康な猫の尿の色はやや濃い黄色です。しかし、尿の中に血が混ざっているときや、ヘモグロビンやミオグロビンなどが混ざっているときは、赤やピンク、濃いオレンジ色などに見えることがあります。
尿が赤っぽい色に見えるときは、まとめて「血尿(けつにょう)」と呼ぶことがあります。しかし、実際に血(赤血球)が混ざっている場合もあれば、赤血球の色素であるヘモグロビンが混ざって赤っぽい色に見えていることや、筋肉内に含まれている色素が混ざって赤色になっていることもあります。 なお、水分を含むと黒っぽい色になって固まる砂では、尿の色の変化に気付きにくくなります。白い紙砂やペットシーツなどを使い、常に尿の色をチェックできるようにしておきましょう。
とはいえ、自宅でどの種類の血尿なのかはわかりません。遠心分離機にかけたり、尿の性状を検査することで判明します。
動物病院で検査をしてもらわないと、赤い尿が出ている正確な原因は分からないのです。
いわゆる「血尿」とは血(=赤血球)が混ざっている尿のことを言います。尿に血が混ざっているときは、腎臓や尿管、膀胱、尿道のいずれかに出血があると考えられます。
血尿の場合、その多くは膀胱からの出血です。つまり膀胱炎などが原因で、膀胱粘膜に炎症が起き、出血することで血尿が生じます。
交通事故などにより腎臓に損傷を受けた場合にも血尿が出ることがあります。このようなケースでは、血尿以外にも爪や四肢に外傷がある場合があるため、特に外に出る猫の場合は注意して観察しましょう。
「血色素尿」は、血尿とほぼ同じ色をしているため、獣医師でも見た目だけでは判別ができません。これは、血液そのものが混ざる血尿とは異なり、赤血球の中にある色素(ヘモグロビン)が混ざっていることが特徴です。
血色素尿は、なんらかの要因で赤血球が破壊され、内部の色素が流れます。これを溶血(ようけつ)といいます。赤血球は、いわば赤い色の水が入った水風船のようなもので、この水風船が割れることで、中の赤い水だけが流れるのが血色素尿です。
溶血の原因で有名なのは、玉ねぎ中毒です。玉ねぎを食べると、犬や猫では溶血を起こします。ほかにも、全身の免疫疾患により「赤血球は敵だ!」となぜか攻撃されることで起こることもありますし、ヘモバルトネラという寄生虫が寄生することでも生じます。
「筋色素尿」とは、筋肉内のタンパク質であるミオグロビンが含まれた尿のことです。ミオグロビンが含まれているため、「ミオグロビン尿」と呼ばれることもあります。
筋色素尿は、急性筋炎や長時間の発作、過度の運動や外傷により筋肉の細胞が破壊されることで生じることが一般的です。
猫の血尿の原因としては、膀胱 炎や尿石症(膀胱結石)などが挙げられます。それぞれどのような症状の病気なのか、また、治療費の目安について見ていきましょう。
血尿といえば、まっさきに思い浮かべるのが膀胱炎です。膀胱炎は、細菌感染によって発症する「細菌性膀胱炎」や、検査しても原因が不明な「特発性膀胱炎」などがあります。
細菌性膀胱炎は、下痢でお尻が汚れていたり、トイレが清潔でなかったり、飲水量が少ない(尿が少ない)ときに尿道から細菌が入ってしまうことで罹ります。また加齢やウイルス感染などで免疫が弱まった場合にも罹ってしまいます。
まずは、普段からトイレを清潔に掃除すること。そして好きなときに必要なだけ水を飲める環境を作っておき、「膀胱を尿でしっかり洗い流す」という意識を持つことが重要です。 一方、特発性膀胱炎は「原因不明」なケースが多いですが、体質や肥満、冷え、ストレスなどによって悪化するとされています。猫が快適に生活できるように室温や食事量に配慮するのはもちろんのこと、環境を頻繁に変えるなどのストレスを与えないように注意しましょう。
下痢については、下記記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
膀胱炎の治療法は原因によっても異なりますが、診察と尿検査、内服薬の処方で5,000~6,000円が目安です。他にも血液検査などを実施すると1回あたり5,000~30,000円ほどかかります。 何度か通院して治療することが一般的ですが、3回通院する場合であれば合計45,000円程度は見積もっておきましょう。
関連記事:猫の膀胱炎を獣医師が完全解説。50%が1年以内に再発。レントゲンやエコー写真も紹介
関連記事:猫が膀胱炎に!治療費はどのくらい?膀胱炎の症状や治療費について解説
尿石症とは尿路結石症などとも呼ばれ、尿路(腎臓や尿管、膀胱、尿道)に結石が生じる病気です。マグネシウムなどのミネラルを過剰に摂取したり、尿が食事や細菌感染の影響でアルカリ性になることなどが原因とされています。
結石が膀胱の中をコロコロ転がることで、膀胱の壁が傷つき、出血して血尿が出てしまいます。さらに結石は細菌にとっては格好の隠れ家になるため、抗生剤を使っても治らない難治性の細菌性膀胱炎の原因にもなってしまいます。
水分をあまり摂らない傾向にあることも、猫に尿石症が多い原因の1つです。尿量が少ないと濃い尿が膀胱に長くとどまってしまい、尿石症のリスクが高くなります。常にきれいな水を飲めるようにしておき、”たくさん飲んで、たくさん出す”環境を整えましょう。
食事も重要で、偏った栄養バランスの食事では、尿のミネラルが高まったりpHが高まったりと、尿石のリスクを上げます。できるだけ信頼できるメーカーの良いフードを選びましょう
尿石症の治療は、結石のできた場所や重症度、種類によって異なります。
例えば、療法食で溶解が期待できる「ストラバイト結石」では、療法食のみで良化するケースがあります。しかし、大きすぎる場合は手術で摘出することもあります。また、尿石症は再発の可能性があるため、一度治っても、療法食の継続や定期的な通院が必要になります。
治療費は病院によっても異なりますが、検査や診察、内服薬の処方で1,000~6,500円が目安です。膀胱結石の手術が必要な場合は、1回あたり150,000~200,000円ほどかかります。
出典)FPC「膀胱結石」
膀胱炎や尿石症以外の原因としては、子宮や卵巣の疾患や、ペニスからの出血などがあります。厳密には血尿ではなく出血ですが、性別に分けて見ていきましょう。
避妊手術をしていないメスは、子宮や卵巣などの生殖器系の疾患や炎症により出血することがあります。生殖器系の疾患のなかで比較的よく見られるのは子宮蓄膿症です。未避妊のメスで「血尿が出た」と動物病院を受診し、実は子宮蓄膿症だったというケースもあります。
子宮蓄膿症は、子宮が細菌感染し、膿が溜まることで起こります。未避妊では多い病気のひとつ。子宮蓄膿症にかかったときには、手術によって膿でパンパンになった子宮を卵巣と一緒に摘出し、抗生物質を投与することが一般的です。 治療費は約150,000円、治療期間は1週間が目安となります。子宮蓄膿症は発見が遅れると、腹膜炎や敗血症を起こし、場合によっては死に至ることもあるので注意しましょう。
出典)FPC「子宮蓄膿症」
オスの場合、何らかの理由でペニスの先端を何度もなめたり噛みついたりすることがあります。猫の舌はとげのように突起があるため、何度もなめるとペニスが傷ついてしまい、出血して尿中に混ざってしまいます。
ペニスの先端が腫れてしまうと尿がでなくなったり、カテーテルという管を通して尿を出すなどの処置が難しくなります。なるべく早く動物病院を受診して、ペニスをなめる原因になっている病気を治療してもらいましょう。
血尿の原因によっては、自然と治ることもあります。実際、自然界でもそのように営まれていることも多いでしょう。
例えば、ごく軽度の膀胱炎であれば、膀 胱の自浄作用で徐々に治っていったり、血尿ではありませんが陰部からの出血であれば傷が塞がれれば治ることも多いです。
しかし、根本的な原因が取り除かれていないため、再発のリスクは高く、また原因によってより悪化していくことも多々あります。 基本的には、自然治癒を期待するよりも、早めに動物病院で適切な検査や治療を受けたほうが、猫にとっての負担は軽くなると考えられます。症状が軽いうちに病院を受診しましょう。
猫に次のような様子が観察されるときは、血尿の原因である膀胱炎や尿石症が重症化している可能性があります。
食欲が落ちている
活動量が落ちている
元気がないように見える
嘔吐する
トイレに行く回数が増えているが、ほとんど尿が出ていない
大量に出血している
基本的には、血尿が出ている場合にはすぐに詳しく調べてもらう必要があります。特に血尿に加えて上記の症状が見られたときは、できるだけ早く病院を受診するようにしましょう。
猫が血尿を出したときは、慌てず、次の対応を実施しましょう。
おしっこを回収(採尿)する
嘔吐や頻尿など、他の症状を確認する
動物病院を受診する
それぞれの対応について具体的に解説します。
血尿の原因は、膀胱炎や膀胱結石などさまざまです。原因によって治療法が異なり、おしっこから得られる情報はとても重要です。まずは血尿をスポイトなどで回収して、動物病院で検査してもらう ことが第一です。
とはいえ、そんなに簡単なことではありませんよね。そんな時のコツを解説します。
固まるトイレ砂だと、文字通りおしっこと砂が固まってしまい採尿がうまくできません。そんな時は、システムトイレだと楽ちんです。 システムトイレはおしっこがそのまま透過して下部のシートに吸収される構造です。シートを抜いておけば、おしっこがトレイに溜まりますので、それをスポイトで吸い上げましょう。
難点は、多頭の場合に誰のおしっこなのかがわからなくなる点ですが、タイミングを計れば解決できます。
やや難易度が高いですが、おしっこの瞬間に紙皿などのトレイを差し出して、おしっこを採取します。瞬発力が大事ですね!
猫砂の上にラップを置いておくと、そこにおしっこが溜まります。あまりうまくいかないことも多いですが、何度かトライしましょう。
採尿がうまくできない時には、早めに病院を受診し、採尿出来なかったことを伝えましょう。動物病院では、エコー検査をしながら膀胱に注射針を刺して尿を回収したり、ペニスからカテーテルという管を入れて採尿する方法があります。
採尿にチャレンジしつつ、頻尿になっていないか、嘔吐していないか、食欲が落ちていないかなど、血尿以外の症状についても確認しましょう。「血尿がでた!」というときに考えられる病気はいくつかあります。
血尿以外にはどんな症状が出ているか、いつから症状があるのかといった情報があると、正確な診断のための大きな助けになります。動物病院で獣医師に聞かれたときに答えられるよう、メモを見返す、ご家族から情報を集めるなど準備しておきましょう。
準備が出来たら、動物病院を受診しましょう。
もしも血尿に加えて、尿がほとんど出ていない(トイレから動かない、排尿姿勢のまま鳴いている)場合や、ぐったりとして元気が無いような場合には、急いで動物病院を受診しましょう。 夜間であれば救急病院を受診する必要があります。いざというときに慌てずに済むように、お住いの地域の救急病院を調べておきましょう。
猫の血尿を予防する方法として、次の3つのポイントが挙げられます。
猫にストレスをかけないようにする
しっかり飲水できるようにする
バランスの取れたフードを選ぶ
体調の変化に早めに気付く
それぞれの予防法について解説していきます。
ストレスによって膀胱炎になり、血尿が出ることもあります。また、過剰に身体をなめたり、自分の尻尾をかんだりするとき、同じ場所を行ったり来たりするなどの落ち着きのない行動を示すときも、ストレスのサインです。 反対に、急に遊ばなくなったり、高齢というわけでもないのに高いところに行かなくなったりするとき、トイレ以外でおしっこやうんちをするときも、ストレスかもしれません。
引っ越しやカミナリ、花火大会やお客様の来訪などはストレスになりやすいです。いつもと明らかに行動が異なるときは、猫の環境に変化が生じていないか一度生活や接し方を見直してみましょう。
十分な飲水量は、泌尿器疾患全般でとても重要です。膀胱炎に限らず、泌尿器系の病気が多い猫では、普段からしっかり飲水できる工夫をしましょう。
<飲水量を増やすコツ>
水飲み場をあちこちに作る
温水を用意する
流水にする(流水式の飲水器など)
器を工夫する
ウェットフードを混ぜる
猫のフードは数多の種類がありますが、できるだけ信頼できるフード選びを心がけましょう。何が信頼できるかの判断は難しいので、獣医師に相談すると良いですよ。
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猫の生活を丁寧に観察し、体調の変化に早めに気付くことも大切なポイントです。食事量やトイレの回数だけでなく、活動量や元気さなどもチェックしてみましょう。 実際のところ、血尿を完全に予防することはできません。毎日注意深く観察することで、体調の変化や異常に早く気付き、症状が深刻になる前に病院を受診しましょう。
膀胱炎や尿石症、子宮蓄膿症などの病気は、いずれも症状が軽いうちに気付いて適切な治療を受けることが重要です。早めに気付くためには猫を注意深く観察する必要がありますが、付ききりで観察することは難しいですよね。
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ライター
猫様のいる暮らし編集部
2匹の猫様と一緒に暮らしています。無防備になったお腹に顔をうずめ、猫吸いをさせていただくのが至福の時間。 猫様との暮らしにまつわる情報をお届けします。