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もしかして尿道閉塞かも。猫がトイレから出てこない。急に増えるトイレの時間。原因や対処法を獣医師が解説

もしかして尿道閉塞かも。猫がトイレから出てこない。急に増えるトイレの時間。原因や対処法を獣医師が解説

ヘルスケア
最終更新日: 公開日:

「さっきからずっとトイレに入っている」、「何度もトイレに行き、長時間出てこない」など、長い時間トイレ内に滞在している状態は、病気のサインかもしれません。ただ単にトイレに隠れているのでなければ、尿道閉塞など命に関わる病気も考えられます。今回は、「長時間トイレに滞在する」についてご紹介します。


監修した専門家

中山 舞

中山 舞

いろどり往診動物病院 獣医師

獣医師。都内動物病院・ペット保険会社での経験を経て往診専門の動物病院を開業。緩和ケアや看取りを中心に、ペットが大好きな家族と過ごす時間のサポートに力を入れている。


トイレの排泄時間、どのくらい?

そもそも、トイレでの排泄時間はどのくらいでしょう。なかなか数えたことがある方はいないはずです。

Catlog総合研究所によると、猫のトイレでの排泄時間は、うんちの場合でおよそ30秒ほど。おしっこの場合は15-20秒程度です。おしっこの方が若干短いくらいで、いずれも1分以内に排泄を終えるようです

体重別の「うんち時間」の雌雄差
体重別の「おしっこ時間」の雌雄差

おしっこの方は、排泄時間の雌雄差が大きく、オスの方が長いことがわかります。これは尿道の構造の違いによるところが大きいと考えられます。

もちろん、個体差があるので一概には言えませんが、猫の排泄時間が異常に長いとき、どんなことが考えられるかをご紹介していきます。

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トイレにいる時間が増えるわけ

トイレに入ったまま出てこない、おしっこの体勢を取ったままじっと動かない、トイレ内でそわそわしている、などの様子を見かけたことはありませんか? 単純に隠れているということもあり得ますが、特におしっこやうんちが出せない(または出しているがかなり努力する必要がある)ような状態である場合には注意が必要です。

トイレに隠れている場合

猫は、ストレスがかかった時や警戒するときに「ひとりになれる安全圏」に隠れることがあります。急な来客時など、ソファの裏や、家具と家具の隙間(薄暗いところ)などに身をひそめ、じっと周囲の様子を確認することがありますよね。猫によっては、トイレをこのような場所(ひとりで落ち着ける場所)として捉える場合もあります。特に、四方を壁に囲まれたトイレなどでは、このような行動をとることがあります。

この場合は特に注意が必要というものではありませんが、あまりに長いこと隠れている場合は、何かがストレスになっていないか確認してみましょう。

おしっこを出そうとしている場合(要注意)

「トイレに入って排尿姿勢を取るが、なかなか出ない」というような場合は注意が必要です。この場合、主に2通りのことが考えられます。

(1)少量のおしっこを絞り出そうとしている

膀胱炎などの時に見られるものです。頻尿という症状で、何度もトイレにいき少量の排尿を繰り返します。膀胱内に炎症が起こると、ほんの少しおしっこがたまるだけで刺激が生じ、排尿しようとします。残尿感があるので、おしっこした後もしばらく排尿姿勢を取ることがあり、トイレ滞在時間が伸びます。

1回の排尿量はごくわずかなので、ぱっと見ではおしっこが出ているのか、全く出ていないのか分かりにくい場合があります。猫砂の濡れ具合、ペットシーツも確認するなどして、「少しでも出ているか」を確認しましょう。

(2)おしっこを出そうとするが出ない

尿道部分閉塞の猫

(写真:尿道部分閉塞の猫)排尿の姿勢のまま動かず、トイレにこもっている様子。よく見ると、トイレの外壁に散らしてしまったおしっこの形跡も見えます。

もっとも警戒すべきはこの状態です。おしっこはたくさん貯留しているのに、何かが尿道を塞いでいておしっこが出せない状態を「尿道閉塞」と言います。おしっこを出そうとするのに出ない状態のときは、尿道閉塞が疑われます。放置すると命に関わるため、早急に処置をする必要があります。

この状態になると、トイレの近くや砂の上に居座るようになったり、痛みから排尿の姿勢で鳴いたりする様子が見られることがあります。陰部をしきりに舐めたり、ペニスをかじったりする場合もあります。

全くおしっこが出ない完全閉塞の場合だけでなく、ほんの少量だけ出る「部分閉塞」の場合もあります。部分閉塞の場合は、頻尿との見極めも重要になります(後述)。

うんちを出そうとしている場合

「うんちを出そうとするが出ない」という状態だけでなく、「出しているが、量が多い(または出しにくい)」という状態もあります。

(1)大量の便の排泄

大量に便が溜まっている状態であると、全部出しきるのに時間がかかります。便秘の解消時や、食物繊維の多い食事に変えた後などでは、排便量が増えることがあります。

(2)下痢を絞り出そうとしている

下痢をしている場合、下痢の原因によっては少量頻回のトイレを繰り返します。いつも通りの便をしたあとに、やや緩い便やドロッとした下痢・粘液を絞り出すようなケースもあります。その際、長い間便意が続くことがあり、トイレの滞在時間が伸びます。

(3)便秘

猫は便秘になってしまうケースが多く、体内に長く留まるほどうんちが硬くなるため、余計にうんちが出しにくくなってしまいます。

便秘のときの気持ちがわかる方も多いと思いますが、同じく猫もつらいものです。トイレの滞在時間が長く、一生懸命にうんちを出そうとしているのに出ないときは、早めに病院に連れて行く方が良いでしょう。そのうえで、便が柔らかくなるフードや、水分摂取量を増やすなど、飼い主が工夫して便を出しやすくしてあげましょう。

トイレの滞在時間はどう観察すると良い?

とはいえ、トイレに滞在している時間はなかなか計測できるものではありません。留守が多い方ではなおさら難しいでしょう。そんな時は、在宅時だけでもトイレに注目して、「いつもと比べてどうか」を判断基準にしてください。「おしっこの時は1分程度で出てくる」などの感覚でも構いません。これを大幅に過ぎてもトイレにいる場合は、何が起きているかをじっくり確認してみると良いです。

トイレ滞在が長いとアラートで教えてくれる。Catlog Boardを使ってトイレ情報を確認しよう

Catlog Board(キャトログボード)

Catlog Board(キャトログボード)は、トイレの下に置くだけでトイレ内での情報を網羅的に記録することができます。おしっこ量、おしっこ回数、うんち量、うんち回数などです。そして体重もわかります。留守中のトイレについてもわかるのが良いですよね。

異常があったときのアラートも充実しています。例えば、トイレ滞在時間が大幅に伸びているときに、アプリでお知らせしてくれます。その他にも、異変の兆候があればお知らせしてくれるので、ただ置いているだけで簡単に健康管理ができるようになります。

また多頭飼いの場合でも、それぞれの猫の体重・排泄時の”くせ”などの情報からAIが判定し、誰が排泄したのかが分かるようになっています。

泌尿器疾患や消化器疾患に気をつけたい方は、ぜひ導入をお勧めします。

Catlog Boardのご紹介はこちら

トイレ滞在時間が増える病気とは?

トイレの時間が長くなる病気を、もう少し掘り下げてご紹介します。

<トイレ滞在時間が増える病気リスト>

病気

トイレ時間が増える症状

その他の症状

尿道閉塞

排尿なし、または少量

血尿、激しい痛み、嘔吐、ペニス/陰部を舐めるなど

膀胱炎

頻尿、残尿感による尿意の継続

血尿、結晶尿、匂いが強い尿、粗相など

慢性腎臓病

多尿

食欲不振、体重減少、多飲、悪心、脱水など

腸炎

下痢、しぶり

軟便、血便、食欲不振、元気消失、腹痛など

便秘、巨大結腸症

排便困難

排便時の痛み、腹痛、食欲不振、肛門の出血、嘔吐など

消化管内の異物

排便困難

排便時の痛み、腹痛、肛門の出血、嘔吐など

尿道閉塞

「尿道閉塞」は、命に関わる病気です。膀胱内に結石や細胞の塊などができ、それが尿道に流れることがあります。流れてしまうタイミングは誰にもわかりません。それらが尿道の途中で詰まり、おしっこをせき止めてしまうことがあります。これを尿道閉塞と言います。オスは尿道が狭いため、ほとんどがオスに発生するのも特徴です。

完全に閉塞(詰まること)してしまう場合もありますが、部分的に閉塞することもあります。閉塞を起こすと、激しい痛みと強い尿意が生じます。尿道閉塞の症状の特徴もご紹介します。

<尿道閉塞の症状の特徴>

  • ある日突然起こす

  • 膀胱炎、膀胱結石などを患っている

  • 排尿姿勢をとるが、おしっこが出ない/ほとんど出ない

  • ぐったりとする

  • 嘔吐、食欲不振

  • 何度もトイレにいく、トイレ以外のところでもぽたぽた漏れる

尿道閉塞は、すぐにでも病院にいくべき

動物病院で処置しない限り、ほとんどの場合は長時間閉塞が続きます。それでも腎臓では尿が作られ続けるため、膀胱がパンパンに張り、場合によっては膀胱破裂を起こすこともあります。破裂はしなくても、尿の流れがせき止められるため、その手前にある腎臓にも大きなダメージを与えてしまい、急性腎不全に進行することもあります。

また、本来は尿として捨てるべきものが捨てられなくなることも問題です。中でも、カリウムは体内に多くたまると心臓を止めてしまう作用があり、尿道閉塞によって突然死を起こすこともめずらしくありません。

もし、尿道閉塞を疑う症状があれば、すぐにでも病院に連れていくようにしましょう。

膀胱炎の頻尿と尿道閉塞はどう見分ければ良いの?

前述の通り、重度の頻尿の場合は、何度もトイレに入り、ほとんど排尿しない、という状態がみられます。これは、尿道閉塞と非常に似た症状であるため、見分けるのはとても難しいです。いずれにせよ病院に連れていくことが重要ですが、その違いについても記載します。

尿道閉塞

頻尿

おしっこ量

なし〜ごく少量

少量

排尿努力

強い

いきみあり

痛み

強い

あり

嘔吐

しばしば

ほぼ見られない

お腹の膨らみ

固く張った膀胱を触知

なし

ただし、必ずしもこれらに当てはまるものばかりではありませんので、異常を感じたら動物病院に相談してください。

膀胱炎

膀胱は、腎臓で作られたおしっこをためる臓器ですが、その内部に炎症が起きることを膀胱炎と言います。その原因はさまざまで、細菌によるもの(細菌性膀胱炎)、結石によるもの(尿石症、膀胱結石)、原因不明のもの(特発性膀胱炎)などがあります。

膀胱炎を起こすと、頻尿や血尿などが見られます。また、感染が重度になると膿尿(のうにょう)という膿のようなおしっこや、真っ赤な血尿が見られる場合もあります。

一回のトイレ時間はさまざまですが(変わらない場合もあれば、延長する場合もある)、何度もトイレに行くため、トイレの滞在時間の合計は著しく上がります。

尿道閉塞とは異なり、嘔吐、食欲不振といったおしっこ以外の症状はあまり見られないことが多いです。ただし閉塞との見分けがつかない・自信がない場合は、必ず動物病院で確認してもらいましょう。

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慢性腎臓病

猫で最も注意すべき病気とも言える慢性腎臓病は、腎臓が少しずつ侵されることで発症します。猫の死因の1位はこの病気で、長い年月をかけて進行する病気です。多飲多尿という症状が特徴的で、たくさんお水を飲んで、たくさんおしっこをする症状が見られます。たくさんおしっこをするので、トイレでの排泄時間も長くなる可能性があります。

慢性腎臓病では以下の記事で詳細にご紹介しているので、ぜひご参照ください。

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【関連記事】猫の慢性腎不全(慢性腎臓病)を徹底解説。どんな症状が出る?治療費はどのくらい?

腸炎

小腸や大腸に炎症を起こすものを総称して腸炎と言います。腸炎では下痢や血便、嘔吐などの消化器症状を起こしやすく、その他にも食欲不振や体重の減少も引き起こすことがあります。

特に、大腸性下痢を起こすと、排便回数の増加やしぶり(強い便意)を起こし、普段の10倍もトイレ回数が増えるという報告もあります。結果として、トイレ滞在時間が長くなってしまいます。

便秘・巨大結腸症

便秘で悩む猫は多く、しばしば慢性化します。便意がないときはトイレ時間は少なくなりますが、便意が生じると、長い時間トイレにこもります。うんちは非常に硬くなるため、排泄ができない、またはかなり時間がかかることがよくあります。

慢性腎不全や糖尿病でも便秘を引き起こしやすいと言われています。便秘が持続すると、元気や食欲が低下し、体重も落ちてくることがあります。また、強くいきんでもうんちが出ないときは、そのまま嘔吐することもあります。

巨大結腸症とは?

慢性で重度の便秘になると、巨大結腸症と診断されることもあります。結腸がうんちを排出する力が極端に弱くなってしまう病気で、多くの場合、元の状態にはもどりません。このような状態にならないためにも、日々の排泄のモニタリングをし、便秘が続きすぎないうちに動物病院で診療を受けましょう。

猫のトイレ時間が長い!と気づいたときにすべきこと

もし、猫のトイレ時間が長いなと感じたときは、ぜひ以下を参考にしてください。

<猫のトイレ時間が長い時>

①猫をよく観察し、なぜトイレ時間が長いのかを確認する

②動物病院に連れていく

① 猫をよく観察し、なぜトイレ時間が長いのかを確認する

トイレの回数が増えている場合は、なぜトイレに行くのかを確認しましょう。以下にチェックリストを載せておきますので参考にしてください。

<トイレ時間が長くなるときのチェックリスト>

  • トイレで排尿・排便姿勢をとるか(出そうとしているのか、隠れているだけか)

  • 出そうとしているのはおしっこか、うんちか

  • 量は少量でも出ているか、まったく出ていないか【重要!!】

  • トイレにいく回数はどうか

  • 排泄物の色、匂い、やわらかさ(うんちの場合)は、平常時と変化はあるか

  • その他に何か症状はあるか(嘔吐、痛そうにしているなど)

もっとも注意しなければならないのは「尿道閉塞」です。もし、何度もおしっこをしようとするのに、出ていないときは、迷わず病院に連れていきましょう。

② 動物病院に連れていく

原則、動物病院に連れていくことがベストですが、例えば、何度も便秘を繰り返していて、対処や出るタイミングなどがわかっているときは、これまでの治療方針に応じて対応するという方法もあります。

前述した病気の中でも急を要するものと、(少なくとも半日〜1日程度)様子見しても許容できるものがありますので、迷う場合は動物病院に電話で相談してみましょう。

Catlogアプリで「急なトイレ滞在時間の増加に注意が必要です」のアラートを受け取った方へ

「Catlog Board(キャトログボード)」では、トイレの滞在時間の増加についてお知らせする機能を搭載しています。これまでにご紹介した内容を確認しながら、思い当たることがある場合には、かかりつけの動物病院にもご相談ください。

※このアラートは、何らかの理由でCatlog Boardが正しく計測できなかった場合にも表示されることがあります。猫様の健康状態に問題がない場合は、記録に誤りがないか等をご確認ください。

※Catlogシリーズは、動物の疾病の診断、治療もしくは予防に使用するものではなく、医療機器ではありません。本アラートを参考のひとつとしていただき、ご自身の判断で動物病院にご通院等いただくようお願いします。

まとめ

猫の「急なトイレ滞在時間の増加」についてご紹介しました。本来、排泄中は無防備になるため、短時間でサッと済ませて、砂をかけて隠し、離れるのが本能的な行動とされています。いつまでもトイレにいることは猫にとっても本意ではないはずですし、ストレスによって更に悪化してしまう可能性もあります。早めに気付いて対処してあげましょう。

猫は泌尿器疾患や消化器疾患が多い動物ですので、ぜひ本記事をご愛猫様の健康管理のご参考にしてください。

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ライター

猫様のいる暮らし編集部

猫様のいる暮らし編集部

2匹の猫様と一緒に暮らしています。無防備になったお腹に顔をうずめ、猫吸いをさせていただくのが至福の時間。 猫様との暮らしにまつわる情報をお届けします。


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