株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
猫のうんちがいつもと違う経験は多くの方が持っているはず。特に下痢や軟便は起こしやすいうんちの異常ですが、そこには必ず理由があります。なんとなくで治ってしまうことも多いのですが、原因不明のままにするのではなく、本記事で解説するどれに当てはまるのかを冷静に予測し、適切な対策をとりましょう。本記事では、猫のうんちが下痢になってしまう原因と、適切な対処法を解説します。
<この記事のポイント> ・下痢の性状を確認しよう ・考えられる原因は多くある ・ぐったりしていたり嘔吐もあるならすぐ病院へ
監修した専門家
株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
便に含まれる水分量が増えるものを「下痢」と言います。多くの場合、消化管に問題が発生しており、普通のうんちや下痢とは少し違った色や形になるのですぐにわかるでしょう。
うんちに含まれる水分量が90%以上のものを差します。通常の便は70%ほどの水分量ですが、それに比べてゆるいのが特徴です。
水様便よりも固さがあるものの、水の量が多いため指で押すと変形しやすかったり、簡単に崩れたりします。また、泥状になることもあります。この状態は軟便と呼ばれます。
血が混じっている状態を血便と呼びます。胃腸のどこかに異常があることが多く、色でおおよその判断ができます。赤い血が混ざっている場合は大腸付近で、真っ黒い黒色便が出る場合は胃や小腸での異常であることが多いです。
血便については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
下痢にゼリー状の白いものが混ざるのを粘液便と言います。主に大腸に異常があるときに見られる便です。軟便と合わせて、トイレで排便のポーズをしていても出せない場合は軟便か粘液便の可能性があります。
もうすこし原因に寄せてみると、下痢には、大きく分けて2つの種類があります。小腸が原因で起きる下痢 、大腸が原因で起きる下痢です。
小腸性下痢 | 大腸性下痢 | ||
---|---|---|---|
排便 | 回数 | 変わらない〜少し増える | 増える |
出にくさ | なし | あり(少ない) | |
うんち | 量 | 増えることが多い | 正常〜やや減る |
性質 | 正常〜水のような下痢 | 軟便、やや形がある | |
血便 | なし(ある場合は黒色に) | 見られることがある | |
形 | さまざま | 正常または少し細くなる |
子猫の下痢は、より注意深い対応が必要です。 虫下だしが済んでいない子 猫では、消化管内寄生虫による下痢がよくみられます。ほかにも、お迎えなどで環境が変化することによるストレス性の下痢もあれば、急な食事変化による下痢もあります。 いずれにせよ、子猫では下痢そのものによる水分喪失で体調が悪化することも多いため、なるべく早期に動物病院に行きましょう。
関連記事:猫のうんちから健康状態を知る方法|不調の見極め方と対処法も紹介
猫が下痢をする原因は、いくつかの種類に分けることができます。
感染
食事
異物
病気
ストレス
寒さ
ほとんどは成猫と同じ原因で下痢になることがほとんどですが、子猫の場合は深刻な状態になりやすいです。
ウイルスなどの微生物による感染が原因のものです。ウイルス性の代表的なものにパルボウイルス感染による「猫汎白血球減少症」、コロナウイルスによる「コロナウイルス性腸炎」があります(COVID-19とは関係ありません)。どちらも、混合ワクチンである程度予防することができます。特に、パルボウイルスによる下痢はかなり激しく、また感染力も強く、命に関わることも多いため注意が必要です。
カンピロバクターやウェルシュ菌(通称)と呼ばれる細菌などが原因で起こります。
寄生虫による下痢もあります。コクシジウムや線虫、条虫などで起こすことがあります。外で生活していた猫は感染していることが多く、保護猫や野良猫だった猫では症状がなくても、動物病院で検査を受けることをおすすめします。
人と同じく、食事が原因で下痢になる場合もあります。猫も個体によってフードとの相性があります。少しフードの種類が変わっただけでも下痢や軟便になってしまうことも しばしば。フード変更後はうんちの状態をいつも以上に観察できるとよいですね。
胃腸が弱っている場合に、消化によくないご飯をあげると下痢を起こしやすくなります。食べすぎが原因で起こることもあります。
急に新しいご飯に切り替えるとお腹をこわしてしまうことがあります。治らないまま症状が長引くようであれば、獣医師に相談しましょう。新しいご飯に切り替えるときは、2週間をめどに少しずつ新しいご飯を今食べているものに混ぜていき、徐々に量を増やすようにできるとよいですね。
猫にも食物アレルギーがあります。何がアレルギーの原因になっているかは猫によって異なりますので、初めてあげる食べ物は少しずつ様子を見ながら与えましょう。
開封してからフードは酸化が始まります。この酸化が進むことで味が落ちるのはもちろん、消化器 への影響をおよぼすこともあります。また、腐敗してしまうこともあります。ドライフードは水分 が少ないた め腐りにくいですが、それでも時間が経てば腐敗します。
普段食べないものを口にすると、消化管がおどろいて下痢や嘔吐などの症状を引き起こすことがあります。また、観葉植物(ほとんどの植物が毒性を持つ)は中毒になることが多く、野菜、牛乳なども下痢の原因になりえます。
また、病気の治療のために処方されている薬(抗生物質など)によって下痢になることもあります。そのような場合は、必ず処方した獣医師に相談しましょう。
おもちゃやヒモを飲み込んでしまいお腹をこわすこともありますが、そのくらいで済めばよいもので、むしろこうした異物は「腸閉塞」というさらに重大な症状を起こすことがあります。
もちろん、病気が原因であることも。胃腸疾患が原因となりやすいですが、あらゆる病気で消化器の異常を起こすことがありますので、安易に断定はできません。
特定するのは難しいですが、ストレスが原因となって、下痢を引き起こすこともよくあります。
猫によって差はあるものの、引っ越しや車での移動、模様 替えなどでストレスを感じることがあるようです。また、痛いと感じるようなこと、爪切りや耳掃除でもストレスを感じてしまう猫も。もし環境を改善しても下痢が続く場合は獣医師に相談しましょう。
寒さが原因で下痢を起こす猫もいます。特に、季節の変わり目など気温が急に変化する時期は注意しましょう。また、冷たいものを口にしたときもお腹を壊してしまうこともあります。
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一部の原因をのぞき、猫が下痢になった際は、「胃腸を休ませてあげる」のが基本的な対策です。胃腸を休ませるために、食事を少なめにしたり、場合によっては食事を抜いたりすることもあります。また、消化器に良いご飯(療法食)もあります。食事の量や種類を変えることで、胃腸を休ませます。
ストレスが原因の場合は、なるべくストレスフリーな環境をつくってあげることも大事ですし、感染症が原因であれば抗生物質や虫下しなどが必要です。
いずれも、原因によって対応がさまざまなので、獣医師による判断を仰いでください。もし、夜中に突然下痢をして困った際、夜間に開いている動物病院が見つからない場合は、とりあえずご飯を少なめにしておく方が無難です。
子猫では、より慎重な判断が必要です。かんたんに脱水してしまう上、食事を取れないことで低血糖などの症状を起こすこともあるので、できるだけ病院で診察してもらうようにしましょう。
下痢をしたときに、どのような状態かを注意深く観察しましょう。
猫を観察する際のチェックポイント
元気はあるか
食欲はあるか
水は飲めているか
嘔吐はないか
便の色・においはどうか
トイレでの仕草に異常はないか
観察するとはいえ、なかなか食欲があるかや水は飲めているかを正確に把握することは難しいですよね。
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