株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
猫がおもらしをすると、なぜうまくトイレができないのか、またどうすればトイレでしてくれるようになるのか悩んでしまいますよね。
猫が粗相をする原因は以下の6つが考えられます。
トイレの環境が気に入らない
住宅環境が大きく変化した
体の衰え
排尿に関わる病気を抱えている
発情によるマーキング行動
トイレの場所を覚えられていない
猫が粗相をする原因よりも飼い主として気になるのは「どうすれば粗相を防ぐことができるか」だと思います。
そこで次に猫の粗相を防ぐための6つの対策を紹介します。 主な対策は以下のとおりです。
トイレ環境の見直し
ストレス解消を試みる
動物病院に相談する
トイレトレーニングの実施
去勢・避妊手術を行う
粗相をした場所はしっかり掃除
本記事では、猫が粗相する原因や対策を知って改善していけるよう具体的に解説していきます。
監修した専門家
株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
アリアスペットクリニック 院長 / 臨床獣医師
神奈川県の地域中核病院でジェネラリストとして経験を積みながら、学会発表も行う。2019年アメリカ獣医内科学会で口頭発表。アニコムホールディングスに入社後は#stayanicomプロジェクトの中心メンバーとしてコロナ禍のペット救護に当たる。2020年から現職。得意分野は運動器疾患、猫使い(使われ)。
猫の飼育本やメディアでは、「犬と違ってトイレトレーニングは必要なし!」と紹介されることが多いですよね。ただしこれ、正確には、猫トイレが猫本来の排泄行動にあっている、と考える方が適切です。粗相をしてしまう原因の前に、猫本来の行動を振り返っておきましょう。
猫は、野外で生活していると、自分でお気に入りのトイレ場所を複数見つけます。その排泄行動は本能的なものと近いため、おうちでのトイレ環境整備にも活用すると参考になりますよ。
やわらかい砂の上
巣穴や食事の場所から離れた場所
身を隠せる安全な場所
ほかの猫がしていない場所
トイレ場所を選ぶとき、固い土の上よりも、公園の砂場のようなさらさらとした柔かい砂の上を好みます。なぜなら、排泄前には穴を堀り、排泄後にはおしっこやうんちに砂をかけて隠すからです。もちろん、食事をする場所の近くにトイレがあることは好みませんし、排泄中は無防備になるため、身体が隠れられる場所を好みます。ほかの猫が既にトイレとして使っている場所も使いません。
これらを踏まえると、本来的なトイレ環境を自宅の中で再現してあげると良さそうですよね。猫によって好みが違うので、全ての猫にはあてはまらないかもしれませんが、基本的に以下を意識してみると良いですよ。
複数のトイレを設置し「自分専用」を作ってあげる
寝床や食事場所から離す(2m以上離すと効果的)
さらっとした柔らかくて細かい猫砂を使う
存分に砂かきできるように、広くて深いトイレを使う
人目につきづらい死角や隅っこに置く
猫が粗相をする原因について考えてみましょう。以下の6つが考えられます。飼っている猫の状態や家の環境などを広くチェックしていきましょう。
トイレの環境が気に入らない
住宅環境が大きく変化した
体の衰え
排尿に関わる病気を抱えている
発情によるマーキング行動
トイレの場所を覚えられていない
まずは、猫のトイレ環境をチェックしましょう。猫はキレイ好きで繊細な動物です。トイレの場所が落ち着かない、汚れている、猫砂のかき心地が悪い、小さすぎるなどの理由により、トイレの中でおしっこやうんちをすることを嫌がり、トイレ以外の場所に粗相してしまうことがあります。
もし猫がトイレをする際、以下のサインがあれば、トイレに不満を持っている可能性があります。
トイレのふちに足を乗せている
トイレ中に足を上げている
トイレ前に砂を掘らない
トイレ後に砂かきをせず急いで出る
一度入ったのにトイレせずに出る
猫はストレスに敏感です。住環境の変化は猫にとってストレスとなりやすく、粗相の原因になることがあります。例えば、引越しや家のリフォームなどがよくある例です。トイレの場所が変わってしまうことも要因かもしれません。
また新しいペットや家族が増えた時、訪問者、工事の騒音、窓の外に外猫が頻繁に現れるなどの変化も、影響することがあります。猫の住む環境の中で、最近大きな変化がなかったかをチェックしましょう。
猫も人間と同様に年を重ねることで体が老化し、運動能力や認知機能が低下しトイレができなくなることがあります。トイレの場所をきちんと認識していても関節や筋肉を上手く動かせず、トイレにまで たどり着けなくなるのです。
またトイレにたどり着けたとしても、上手くトイレに入れなかったり、認知機能の低下により狙いを外してしまったりして、粗相を起こすこともあります。
泌尿器疾患、特に膀胱炎などを抱えていると、おもらしをしてしまうことがあります。猫はもともと、下部尿路系の病気である膀胱炎や尿路結石、腎臓病を発症しやすい動物です。これらの病気は頻尿を伴うことが多く、トイレが間に合わずにおもらししてしまうこともあります。
また病気にかかっていると精神的な不安やストレスを感じるため、これが粗相の原因になることもあるのです。
猫は発情期に入ると、自分の存在やなわばりを主張するためにマーキングとしておしっこをするようになります。
マーキングをするのは主にオス猫(まれにメス猫が行うこともある)で、メス猫に対するアピールやライバルのオス猫に対する存在のアピールとして、壁などの垂直な面に向けてスプレー状の尿を少量噴射し、性フェロモンとしてさまざまな場所に残すのです。
基本的に猫の発情期は年2回程度であり、この時だけ交尾が可能となるメス猫は、特有の鳴き声を出すなどいつもとは行動が変わることもあります。一方でオス猫は 年中交尾が可能であるため、一度マーキングし始めるとマーキングし続けてしまうため注意が必要です。
もし飼い猫が子猫の場合は、まだトイレを覚えていない可能性もあるでしょう。猫はおよそ4週齢頃から、与えられた猫砂を掘ってトイレをします。やわらかいものや、かきわけやすいものを掘るという本能があるためです。
そして掘ると排泄をしたくなるため「掘る→排泄する」ことを繰り返すうちに、猫砂などで排泄できるようになります。もし、なかなかトイレを覚えてくれないようであれば、トイレトレーニングを行う必要があるでしょう。
そのほかにも、不安が原因で粗相をしてしまうこともあります。強いストレスや不安を感じた時に、不適切な場所で排泄することがあり、「非スプレー型マーキング」とも呼ばれます。分離不安症(飼い主と離れることが不安になってしまう症状)をもつ猫では、こうした不安が粗相を誘発しているかもしれません。
似たものとして、飼い主の関心をひくために粗相する(故意にトイレ以外の場所でおしっこをする)こともあります。過去にトイレ以外で排泄した際に、飼い主が叱ったりかまったりしすぎてしまい、「ここで排泄したらかまってくれた!」という記憶がそうさせていることもあるようです。
ここまでで猫が粗相をする原因はわかりましたが、飼い主として気になるのはどうすれば粗相を防ぐことができるか、ということです。そこで次に猫の粗相を防ぐための6つの対策を紹介します。主な対策は以下のとおりです。
トイレ環境の見直し
ストレス解消を試みる
動物病院に相談する
トイレトレーニングの実施
去勢・避妊手術を行う
粗相をした場所はしっかり掃除
まずトイレは毎日こまめに掃除し、排泄物が放置されないように心がけましょう。できれば月に1度は重曹や無香料の洗剤を使ってトイレを洗ってあげるのも良いです。
猫砂は、猫本来の習性を考えると、粒が細かく砂状のもの、無香料、そしておしっこが固まるものがいいとされています。ただし、粒状のものや、固まらない鉱物系の猫砂を好む猫もいますし、好みはそれぞれです。可能ならば複数のトイレに違う砂を用意してみて、好みを調べてみるのもおすすめです。トイレの大きさは猫の体長の1.5倍以上の広さがあると良いです。猫砂の深さは5cmを目安にしてください。
また、冒頭でご紹介した通り、体が隠れられて食事スペースや寝床から離れている場所を好みやすいです。周りが静かで、トイレだけに集中できる場所に設置してあげましょう。逆に、粗相をしてしまった場所にトイレを置く、という裏技も効果があることが。
また、たとえ単頭飼育でも、トイレの数は複数あると良いです。トイレの数は猫の数+1がいいとされていますが、必要に応じて増やしてもいいでしょう。
ストレスが原因と考えられる場合は、可能ならばストレスの原因を除去できればベストです。ただし同居猫との不仲、工事の騒音など解決が難しい場合もあります。また原因がハッキリ分からない場合も多いでしょう。そんなときはおもちゃで遊んで気を紛らせたり、キャットタワーを設置したり、静かに過ごせる逃げ場所を作るなど工夫してあげましょう。
猫用のフェロモン製品などもリラックスできる環境づくりにおすすめです。より詳しくストレスの原因や解消方法が知りたい方は以下の記事で紹介していますので、ぜひこちらも参考にしてください。 猫のストレス解消方法|ストレスサインや原因についても解説 | 猫様のいる暮らし
飼っている猫の様子を確認し、排尿の回数が多い、もしくはおしっこの色やにおいに違和感があるのであれば動物病院に相談してください。また違和感などがない場合でも粗相が続くのであれば、やはり動物病院への相談を行った方がいいでしょう。
可能であれば直近の尿を採取し、持参しましょう。
子猫のおもらしであれば、トイレトレーニングを行っていきましょう。猫砂を掘らないのであれば食後に猫砂の中に子猫の前足を入れると、これをきっかけにトイレで排泄できるようになることがあります。
またサークルの寝床以外を猫砂で埋める方法もあります。詳しいトイレトレーニングの方法については以下の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。 猫がトイレに失敗する原因|失敗しないための方法を解説 | 猫様のいる暮らし
もし発情期によるマーキング行動が原因であれば、避妊・去勢手術を行うという選択肢もあります。マーキングをしていた猫が、去勢後にマーキングをやめる事例も多くあるからです。
ただし、マーキングを開始してから手術を行うと、手術後もマーキングが直らないこともあるため、基本的には生後6ヵ月前後で手術を行うといいでしょう。
原因に関わらず、猫が粗相をした場所はにおいが残らないようしっかり掃除を行ってください。飼い主にとっても家具などに尿のにおいがつくのを防ぐ意味がありますが、それ以上ににおいが残っていると猫がトイレと混同してしまい、同じ場所に粗相をするからです。
特に猫が粗相をした場所のにおいを長く嗅ぐ、また砂をかくような仕草をするようであれば、そこが排泄してもいい場所だと認識している可能性があります。
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