株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
生後まもない子猫は、キャットフードではなく「ミルク」で栄養を補給します。身体がぐんぐん成長するこの時期には、たっぷりの栄養をとってもらいたいですよね。子猫にミルクをあげるには、猫用のミルクを選んだり、正しい姿勢で飲ませたりと注意すべき点もいくつかあります。 本記事では初めて子猫を育てる方へ向けて、ミルクのあげる時期や回数、製品の選び方、作り方などを解説します。
監修した専門家
株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
動物病院勤務 獣医師
獣医師。公務員獣医師として家畜防疫、牛の改良繁殖に携わる。その後はアミカペットクリニック、アカデメイア動物病院にて小動物臨床に従事。株式会社RABOにてWebコンテンツの監修も行っている。
生後1ヶ月未満の子猫は、まだ乳歯が生えていません。胃や腸も未発達で、成猫のようにキャットフードを食べて栄養を補給することができないため、ミルクを飲ませます。なお、ミルクは牛乳ではなく、猫用のミルクを言います。
まず、子猫にあげるミルクと牛乳は別物です。この記事でこれからお話しするミルクは「猫用ミルク」のことを指しています。 子猫に牛乳をあげてはいけない理由は、猫が「乳糖」という成分を体内でうまく分解できないことにあります。牛乳にはこの「乳糖(ラクトース)」という成分が多く含まれており、これを分解するためには「酵素(ラクターゼ)」が必要です。 猫はこのラクターゼをあまり持っていないことから、牛乳をうまく栄養として吸収することができません。それだけでなく、うまく分解することができないので、消化不良をおこして下痢や嘔吐を起こしてしまうことも。
深夜に子猫を拾ったケースなどで、どうしても牛乳しか手に入らない場合は、牛乳をお湯で2倍に薄めましょう。その上で少量の砂糖と卵黄を加えると、擬似的なミルクが作れます。
出典元:日本動物医療センター
ミルクは子猫にとって、唯一の栄養補給の手段です。そのため子猫があまりミルクを飲まないと、心配になってしまいますよね。しかし、ミルクを飲まないからといって、無理やり飲ませてはいけません。
大量のミルクを口に流し込むと、ミルクが気道に入ってしまい、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。うまく飲んでくれないときには、子猫がミルクを欲しがらない理由を考えましょう。(後ほど詳しく解説します)
子猫の食事は、生後4週齢まではミルクだけです。子猫の体がどんどん成長する時期ですが、まだまだ未発達で胃も小さく、一度にたくさんのミルクを飲むことができません。1回にあげるミルクの量や飲ませる間隔は 成長に応じて変わっていきますので、目安を確認してみましょう。
子猫の生後日数(週齢)とあげる間隔、ミルクの量を表にしました。
生後週齢 | ミルクをあげる間隔 | ミルクの量 |
2週齢まで | 2-3時間おき | 1回5-8ml、1日40-80ml |
3週齢まで | 3-4時間おき | 1回8-12ml、1日60-80ml |
4週齢まで | 4-6時間おき | 1回10-20ml、1日80-100ml |
1回に飲めるミルクの量は上限がありますが、回数が多くなるのはOKです。もし、量をもっと飲みたがれば、多少追加しても構いません。
飲ませる時には哺乳瓶が使いやすいですが、乳首のサイズや穴・切れ込みのサイズは、飲み具合を見ながら調整する必要があります。ミルクの出具合は、哺乳瓶を逆さまにしてポタリ、ポタリと一滴ずつゆっくり垂れるくらいで十分です。
なかには、子猫が自力で哺乳瓶に吸い付く力がないことも。うまく飲めない場合は、スポイトやシリンジなどを用いて口を湿らせるようにして、少量ずつ飲ませる方法もあります。
特に、生後1ヶ月未満の子猫は、少しの時間でもミルクが飲めない状態が続くと、すぐに低血糖を起こします。低血糖とは、身体の糖分が不足する状態を言います。糖分はエネルギーとして 使われますが、これが不足すると、ぐったりとしはじめます。それだけでなく、重度の低血糖を起こすと、意識障害(意識を失ったり混迷状態に陥る)やケイレンを起こします。
成猫とは違い、体に糖分を蓄積できないため、ミルクを飲んだ分しかエネルギーを使えません。数時間おきにミルクをあげるのは大変ですが、必ず間隔をあけないようにミルクをあげるようにしましょう。
ミルクだけで育てるのは、歯が生え揃う頃が合図です。以降はキャットフードを食べ始めるようになります。
個体差はありますが 、多くの場合は生後4週間ほどで前歯が生え揃います。この頃から徐々に離乳食に切り替えるため、ミルクのみで育てるのは4-6週間頃までとなります。
このあとは離乳食をミルクに溶かしてあげたり、ドライフードをふやかしてあげたりと、だんだんと固形のフードを食べられるように食事を変えていきます。うまく離乳食を食べられるようになったら、徐々にミルクの量は減らしていきましょう。
残ったミルクの粉は、成長期の子猫や産後の母猫のドライフードに「ふりかけ」として使ってもいいですね。ただし成猫にあげるとカロリーが多くなりすぎるので要注意です。
外で子猫を保護した場合など、状況によっては生後何日くらいなのか判断できないこともあります。生後何日が経過しているのかわからないと、ミルクの適切な量や卒業のタイミングを判断するのが難しくなります。
そこで、子猫の見た目から、生後何日が経過しているのか判断するポイントを紹介します。もちろん猫によって個体差があるため、おおよその「目安」として参考にしてください。
見た目の特徴 | 月齢 |
へその緒がついている | 生後3日前後 |
目が開く | 生後7日前後 |
自力で歩ける | 生後1〜2週間 |
前歯が生え始めている | 生後3〜4週間 |
奥歯や牙が生え揃っている | 生後5〜6週間 |
ここからは実際に子猫にミルクをあげる場合、準備するものやどのような姿勢で飲ませるのかといった「基礎知識」を解説します。また子猫にミルクをあげるタイミングは、排便・排尿のタイミングでもあります。あわせて確認していきましょう。
子猫にミルクをあげる際、事前に準備しておくことは以下の3点です。
排便・排尿を済ませておく
哺乳瓶を用意しておく
ミルクを作っておく
まずは、ミルク前に子猫の排便・排尿を済ませておきましょう。実は、子猫は生後3週間頃まで自力で排泄をすることができません。
子猫はお腹の大きさが限られているため、先にうんちやおしっこをしておかないと食事ができない子も多いからです。いつもより吸いつきが弱いかな?というときには、まずは排泄を促してみましょう(後述)。
また、
通常、母猫がいる場合は子猫のお尻を舐めてあげることで排泄を促すのですが、飼い主が母猫に代わって行うことも可能です。
お湯で濡らしたガーゼを用意する
やさしくお尻をなでなでする
お湯で濡らしたガーゼなどを用意し、優しくお尻まわりをなでなですることで排泄を刺激してあげましょう。多くの子猫はこれだけで排泄してくれるはずです。排泄したあとですと、お腹がすっきりとするため、ミルクを飲みやすくなります。
またミルクが冷めてしまわないよう、哺乳瓶を前もって温めておきましょう。使った後に洗浄するのはもちろんのこと、しっかりと消毒がされた哺乳瓶を準備してください。
最後にミルクを作ります。製品のパッケージに記載されている作り方や、分量を守りましょう。量は飲めても、薄いミルクだと栄養が不足することがあるので、ご注意を。
ミルクをあげる際は、子猫を腹ばいの状態にして、軽く上体を起こしてあげます(横になった母猫のおっぱいに吸いつく姿勢をイメージ)。乳首をななめ下に向けた哺乳瓶を口元に近づけて、口元をミルクで湿らせると吸いついてくれるはずです。
子猫が空気を吸ってしまわないよう、乳首をミルクで満たしてから、口元に近づけます。このとき子猫の頭を優しく支えてあげると、体制が安定するため猫がミルクを飲みやすくなります。
子猫にミルクを飲ませるときは、いくつかの「コツ」を押さえておくことでスムーズに授乳できます。子猫は、目が見えていないため口元に哺乳瓶の乳首を近づけると反射的に吸い付く習性があります。これを利用し、子猫をうつ伏せの状態にしたうえで後頭部をそっと支えて、少しミルクで湿らせた乳首を口元に当ててあげます。
また、身体が冷えてしまうと元気にミルクを飲んでくれません。できれば、授乳中に体が冷えないよう、湯たんぽなどをお腹の下に用意しておくといいですね。
猫用ミルクは、キャットフードよりも栄養が豊富です。高たんぱくかつ高カロリーになるよう、栄養価が調整されています。ぐんぐん大きくなる子猫に必要な栄養素や水分を補給するためには欠かせないものです。
猫用ミルクには、「粉末」と「液体」といった2種類のタイプがあります。猫の年齢やミルクを飲ませる頻度・期間、あげる状況に応じて、使い分けることもできます。
「粉末タイプ」のミルクとはいわゆる「粉ミルク」であり、多くの猫ミルクは粉末タイプです。飲ませる直前に必要な量をお湯で溶かして作ります。その都度作らなければならないため手間はかかりますが、長期保管が可能です。また粘度を調整できるので、離乳食に移行するときにも使いやすく、獣医師からもおススメされることが多いでしょう。
「液体タイプ」のミルクは、紙パックで販売されている製品です。温めるだけですぐにあげられるため、手間はかかりませんが、長期間保管しておくことはできません。また、粉ミルクに比較するとお金もかかります。ですが、手軽に飲ませたいという場合であれば、液体タ イプが良いですね。
ここからは、子猫にあげるミルクの作り方を解説します。まずミルクを作るためには、以下のものを用意してください。
ミルクを作る時に準備するもの
子猫用哺乳瓶
子猫用のミルク(粉タイプまたは液体タイプ)
計量スプーン(製品に付属されている)
お湯(ミルクを溶かす用)
上記を揃えたら、ミルクを作ります。
ミルクを作る手順
お湯を沸騰させたのち、60〜70℃まで冷ます
哺乳瓶の目盛りに従って、1のお湯を入れる
計量スプーンを用いて、ミルクを哺乳瓶に入れる
哺乳瓶のフタをして、よく混ぜる
人肌程度(38~40℃くらい)まで冷まし、フタを吸口に交換してから飲ませる
出来上がったミルクの温度は、うまく飲んでくれるかどうかにかなり影響します。お湯は沸騰させてから必ず60〜70℃まで冷ましてからミルクを溶かし、最終的には人肌より少し温かいくらい(38~40℃)のミルクをあげるようにしてください (熱すぎても、冷たすぎても飲んでくれません)。
ときには子猫がミルクを飲んでくれないこともあります。ここでは子猫がミルクを飲んでくれない理由やその対処法を解説します。無理に飲ませよう とはせず、原因に応じて正しく対処しましょう。
子猫がなかなかミルクを飲んでくれない原因には「お腹がいっぱいだから」があります。ミルクでお腹がいっぱいというよりは、尿やうんちが溜まっていることも多いです。
溜まっているようであれば、排泄を促して出し切ってからもう一度ミルクをあげてみましょう。
哺乳瓶(乳首)のサイズがあっていないことも、子猫がミルクを嫌がってしまう原因です。製品によって乳首のサイズが異なります。
生後間もない場合は、子猫用の哺乳瓶でも大きすぎて吸いにくいかもしれません。この場合は、乳首のサイズを交換できる哺乳瓶を用意するか、哺乳瓶ではなくスポイトやシリンジなどを用いて、ごく少量ずつミルクをあげると良いでしょう。
また乳首部分の穴も、大きすぎたり小さすぎたりすると、ミルクを飲みにくくなってしまいます。特に大きすぎると、誤嚥(ごえん)の危険があるため注意してください。 乳首の穴のサイズは、哺乳瓶を逆さにしたときにミルクが一滴垂れるまたはにじみ出るくらいに調節してください。
ミルクの温度があわない場合も、子猫は嫌がって飲んでくれません。
温度が高すぎても、低すぎても途中で口を離してしまうので、実は重要なポイントです。人肌よりやや温かい、38~40℃前後に調節してあげましょう。
ミルクを飲んでくれないことが、「体調不良のサイン」である場合もありま す。
発熱している
栄養不足
お腹をこわしている
先天性の病気
感染症など
身体が小さい子猫は、ちょっとした不調をきっかけに、あっという間に具合が悪くなることがあります。体温や食事の量、排泄の状態などを細かくチェックして、異変を感じたらなるべく早く動物病院を受診しましょう。
子猫の体調不良は、すぐにでも病院にかかる必要があります。それだけでなく、ミルクを飲まないだけでも身体に大きなダメージを受けてしまいます。色々な工夫をしても飲んでくれない時は、様子を見ずになるべく早く病院にいきましょう。
猫を飼ったことがある方でも、母猫のいない子猫を生後数日から育てた経験はないかもしれませんね。ここでは、子猫の授乳に関する「よくある質問」を4つピックアップして紹介します。
基本的には「飲みたいだけ飲む!」が基本です。特段おなかをこわしていたり体調不良がない限りは、たくさん飲んでもらいましょう。ただ、飲みすぎて吐いてしまうと栄養が吸収できないので、前述した目安量を参考にしてください。
ミルクを飲ませようとすると、子猫が暴れてしまうこともあります。このような場合に考えられる原因は、以下の3つです。
ミルクを飲ませられないときによくある状態
姿勢が不安定で飲みにくい
ミルクの温度や濃さに違和感がある
お腹が空きすぎて、興奮状態になっている
排泄できていなくてお腹がぱんぱん
姿勢が不安定な状態では、猫は安心してミルクを飲むことができません。姿勢を安定させようともがいてしまい、ミルクを飲んでくれなくなります。できるだけ「うつ伏せ」の状態でミルクをあげましょう。うつ伏せではミルクを飲んでくれないときは、少し上体を起こしたり首を高くしてみるなどを試してみてください。
またミルクが熱すぎたり、乳首のサイズやミルクの出具合が子猫にあっていないことも考えられます。ミルクの温度、哺乳瓶や乳首の穴のサイズなどを再度確認してください。 お腹が空きすぎて興奮状態になってしまっていることもあります。一度、落ち着くまで待ってあげると良いでしょう。
子猫が寝てばかりいて、ミルクを飲まないのも不安です。子猫は成猫よりも長時間寝るものですが、食事をしなければ心配になりますよね。 基本的に、授乳は2〜3時間間隔でおこないます。1回に飲める量が少ないので、子猫が小さい(若い)ほど頻繁にミルクをあげる必要があります。よほどぐっすり寝ていない限りは、時間通りに口元にミルクを持って行ってみましょう。
ただし、眠っているというよりぐったりしている場合は、衰弱してしまっている可能性もあります。このような場合は、すぐに動物病院へ連れて行ってあ げましょう。子猫の体調は変化しやすいので、少しでも気になることがあるときは、すぐに動物病院へ連絡してください。
お腹をすかせた子猫は空腹のため大きな声で鳴き始めますが、いざミルクを用意して吸わせても、ミルクが減っていない??ということがあります。
こんなときは、まず乳首の穴のサイズを確認してみましょう。穴が小さすぎてミルクの出が悪く、飲めていないこともあります。また乳首の素材が硬い(やや古い)場合にも、うまく吸えないことがあります。乳首からしっかりとミルクが出ているかも確認したうえで、それでも飲んでくれない場合は、スポイトなどで少量ずつミルクをあげてみましょう。また、ミルクの温度も再確認しましょう。
ただし子猫によっては、満腹になったことで活発になり鳴いている可能性もあるため、子猫の性格をよく見極める必要があります。
成長期の子猫は、細かな体調の変化にいち早く気づいてあげることが何よりも重要です。そこでおすすめしたいのが、「Catlog Board(キャ トログボード)です。
Catlog Boardは、猫用トイレの下に置くだけで使用できるデバイスです。自力で排泄できるようになったら、トイレに入る度に体重や排泄量・回数などを記録してくれます。目が離せない子猫の成長を見守るうえで、大きな味方になってくれるでしょう。
Catlog Boardは、子猫専用の「子猫モード」があります。
子猫モードの特長
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体重の増加は、子猫の健康の重要なバロメーターです。子猫モードで計測した成長の記録はスマートフォンのアプリで確認できるため、日々 の健康状態のチェックにご活用いただけます。小さい頃の成長記録として、見返すのも楽しいかもしれませんね。
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Catlogアプリを実際にさわってみる子猫は、初めの1ヶ月間に必要な栄養や水分をミルクだけでまかないます。ミルクが適切な温度・量であることや、哺乳瓶の飲み口が猫に合っているかどうかは、子猫のミルクの飲み成長にも直結し、子猫の育て方においてとても重要なポイントです。
普段より飲んだミルクの量が少ない、排泄が少ないなどの変化にもいち早く気づいてあげなければなりません。「Catlog Board」をはじめとした便利なアイテムをどんどん活用して、細やかな健康管理をしてあげましょう。
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ライター
猫様のいる暮らし編集部
2匹の猫様と一緒に暮らしています。無防備になったお腹に顔をうずめ、猫吸いをさせていただくのが至福の時間。 猫様との暮らしにまつわる情報をお届けします。
2023/03/31
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