株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
猫のご飯には様々な種類がありますが、猫種や年齢、体質などにより与えるべきものが異なります。またご飯のあげ方にもいくつかのポイントがあり、間違った給餌方法であげ続けていると、猫の健康状態を悪い意味で左右する可能性もあります。猫により健やかに長生きしてもらうためには、適切なご飯を選び、適切な方法で与えることが大切なのです。本記事では、猫の飼い主として、猫のご飯について知っておいてほしいことをまとめました。
<この記事のポイント> ・選び方のポイントは、年齢や好みの風味、粒の大きさなど ・手作りもできるが、難易度は高い(たまにならOK) ・パッケージに書いてある量をあげても太ってしまうことアリ ・フードを変えるときは、徐々に変えよう
監修した専門家
株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
猫のご飯には、主食となるものとおやつになるものを合わせて次のよう な種類があります。
猫のご飯の種類 | 特徴 | |
---|---|---|
市販のキャットフード | ドライフード(カリカリ) | - 水分量が少ない - 長期保存しやすい - 比較的安価 |
ソフトドライフード | - 25~35%の水分量 - ドライより柔らかい - 長期保存に不向き | |
セミモイストフード | - 25~35%の水分量 - 嗜好性が高い - 種類が少ない - 長期保存に不向き | |
ウェットフード | - 水分量が多い - 食べかすが残りやすい - 食後の歯磨き推奨 - 長期保存に不向き - 比較的高くなりやすい | |
手作りのご飯 | - 栄養バランスへの配慮が必要 - 難易度が高く、専門家への相談や勉強が必要 | |
おやつ(ちゅ~る・鰹節など) | - 栄養素としてではなくしつけに利用 - 全体カロリーの5~10%以下が目安 - 塩分は控えめが好ましい |
多くの方は、ドライフード(通称 カリカリ、ポリポリなどと呼ばれます)を選んでいるはずですが、含有する水分量によってさまざまなタイプがありますね。
重要なのは「総合栄養食」であることです。総合栄養食とは、ペットフード協会によると「毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフードと水だけで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養素的にバランスのとれた製品」としており、要するに「これと水だけで生きられる」として認定される食事です。そのため、この総合栄養食をあげていれば、基本的に他のおやつなどは栄養的な観点では不要といえます。この基準をクリアしているフードには「総合栄養食」とパッケージに書いてあるはずですので、一度確認してみてください。
「ペットフード」と聞いて安全性を心配する方もいるかもしれませんが、平成21年以降は、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)のもとで製造・流通しており、過度に心配することはないかもしれません。
こうした市販品の購入ではなく、中には、手作りのご飯をあげている方もいます。ただし、これはそう簡単ではないのも事実です。猫の必要栄養素のバランスや必要カロリーを計算した上で作る必要があるため、ある程度基礎知識の勉強が必要ですね。それでも、手作りのご飯にこだわりたい!という方は、栄養が偏らないように専門家に相談しましょう。
関連記事:猫のおやつはどのくらいの頻度であげればいい?量やタイミング、注意点を紹介
猫のご飯の選び方は、猫種や年齢、体質、健康状態によって違います。さらに、猫によってご飯の好みも違いますよね。ご飯の選び方のポイントは次のとおりです。
選び方のポイント
総合栄養食
年齢に合っているか
ドライフードかウェットフードか
猫の好み(フレーバーなど)
原材料
添加物・保存料
粒の大きさ(ドライフードの場合)
パッケージの大きさ
病気を持っている場合
総合栄養食をベースにフード選びをするのが基本的な考え方です。総合栄養食とは、前述のとおり「これと水だけでOK」という栄養バランスが適切なフードとして設計されており、「ペットフード公正取引協議会」の基準をクリアしたものを言います。逆に、総合栄養食ではないフードだけをあげてしまうと、なんらかの栄養素が不足したり、なんらかを過剰に摂取してしまうなどといったことになる可能性があります。
総合栄養食かどうかは、パッケージや商品HPに記載されていますので、手元のフードを確認してみましょう。
これはとても重要です。実は、年齢ごとに必要なカロリーや、栄養素のバランスが異なります。
例えば、生後数ヶ月の猫では、体重換算では大量のエネルギーが必要で、シニアの猫になるにつれ下がっていきます。また、シニアでは各種の病気リスクも高まるため、それに応じた栄養素に調節されています。
つまり、成長期の猫にシニア用フードをあげていると栄養不足になりますし、シニア猫に成長期用フードをあげると太りやすくなるなどの可能性が高まります。
成長のライフステージに応じたフード選びが必要なので、必ず最初に「どの年齢に向けた製品なのか」をパッケージで確認してから購入するようにしましょう。
基本的には、一部の例外を除き、多くのドライフードは「総合栄養食」として販売されており、さらに取扱いも楽であるため、主食にドライフードが選ばれることが多いです。取扱いが楽、というのは、含有する水分量が少ないため、長期保存がしやすく、さらに軽いのでお店で購入しても持ち帰りやすいということが挙げられます。
ウェットフードは、嗜好性(好きにな りやすさ)が高く、猫によっては「ウェットが混ざっていないと食べない」という場合もあります。また、水分も多いため、飲水量が少なくてもウェットフードにより補給できるという利点も。一方で、腐りやすく、開封後の保存期間は短いです。また、お金もかかりやすいという点もあわせて考えておく必要があるでしょう。
基本的にはドライフード、状況や好みに応じてウェットフードを混ぜる、ようなあげ方が良いかもしれません。ウェットフードをメインとする場合もありますが、歯垢や歯石がたまりやすいとも言われており、一般的にはドライフードを選ぶのが無難です。
ちなみに猫がドライフードを噛まずに飲み込む場合がありますが、あまり気にする必要はありません。猫は「肉を引きちぎる」ことに特化した歯を持っており、かみ砕く習慣がないためです。猫の習性の一つです。
嗜好性を高めるため、フレーバーをつけているフードも多いです。あくまでフレーバーなので、中には「チキン風味」なのに主要原材料にはチキンが使われていないような場合も(特に悪いことではないです)。
フィッシュ風味が好きな猫もいれば、チキンやビーフ風味が好きな猫もいます。さらに、それが加齢やタイミングで変わっていくこともあります。そんな時には、ご飯の見直しをしないといけないのですが、味にうるさいグルメな猫では少々てこずるかもしれませんね。ですが、いく つか種類をあげてみて、愛猫の好みを見つけてあげるのも幸せな時間の一つです。根気よく付き合いましょう。
また、「突然食べなくなった」という場合に、好みのフレーバーにするとすぐに食べ始めることもありますので、「食べ飽き」なのか「食欲不振」なのか考える際にも試す価値があります。
フードによって原材料もさまざまです。よく使われる代表的な原材料として、以下が挙げられます。
肉類
魚介類
穀類
豆類
油脂類
フード選びの際に原材料までチェックする方は少ないと思いますが、特に気にする場面があるとすれば「食物アレルギー」の場合です。猫にも食物アレルギーがあります。かゆみや下痢などさまざまな症状が起きることがあり、病院で検査の上で診断されます。アレルゲン(アレルギーの原因物質)となる原材料は検査で特定できるため、そうしたアレルゲンが少ないものを選ぶ必要があります。獣医師にも相談の上、アレルギー検査や、低アレルゲン食も検討しましょう。
キャットフードには添加物が使 用されていることもあります。添加物が使われる目的は、キャットフードの品質確保のため、味付け、食感の維持や着色などで使われます。そして、長期保存の観点から必要でもあります。ですので逆にいえば、添加物や保存料がないと、賞味期限が短くなったり、味や食感が物足りなくなったりすることもあるでしょう。
これらの添加物は、「ペットフード安全法」で定められた範囲内で配合されており(日本に流通するキャットフードはこれらに準拠しているという前提)、原則的には猫の健康を害する分量は使用されていません。
ただし、添加物の成分表示はあくまでも任意のため、表記していない場合もあります。どうしても添加物の存在が気になるのであれば、オーガニックのキャットフードを選択するといいでしょう。
※出典元:公益社団法人 日本獣医師会「ペットフード安全法に関するQ&A」
ドライフードの場合は、粒の大きさも猫の食べやすさに大きく影響します。一般的には小粒のものを選択するといいと言われていますが、猫にも好みがあります。いろいろと試してみて、食いつきのいいもの採用しましょう。
キャットフードにはさまざまな大きさのパッケージが売られており、大きなものでは10kgのもの、小さなものでは100g以下のものまであります。買い物の手間が省けるため大容量パッケージを購入する方もいますが、可能なら開封から1ヶ月以内で食べきれる程度のパッケージを購入することをおすすめします。
どの製品も、一度開封すると空気に触れるため、徐々にフードが酸化します。酸化が進むと味が落ちるなどの変化が起きるため、猫が食べなくなってしまうことも。目安として「1ヶ月以内で食べ切れる」くらいのサイズがおすすめです。
猫が何らかの病気を抱えている場合は、その病気に合った療法食が推奨されます。