シリーズ「猫様と乳酸菌」第2回 猫様の乳酸菌はストレスにも効く?おなかとこころの深いつながりを解説

シリーズ「猫様と乳酸菌」第2回 猫様の乳酸菌はストレスにも効く?おなかとこころの深いつながりを解説

ヘルスケア
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シリーズ「猫様と乳酸菌」の第1回では、乳酸菌がおなかの免疫に働きかけ、腸内細菌のバランスを整えることで、猫様の体全体に良い影響をもたらす可能性をご紹介しました。

一方で、「乳酸菌がストレスや睡眠にも良い」という話を耳にしたことはないでしょうか。たしかに、人間向けの乳酸菌製品では「ストレス軽減」「睡眠の質改善」を謳うものが数多く販売されています。しかし、「おなかとこころに、どんな関係があるの?」と疑問に感じる飼い主さんも少なくないと思います。

その鍵となるのが、脳腸相関という考え方です。脳と腸は神経やホルモンを介して双方向に影響し合っており、腸の状態がストレスや睡眠にも関係することが知られています。そして猫様においても、同様の仕組みが備わっていると考えられています。

本記事では、脳と腸の深いつながりと、乳酸菌がその関係においてどのような役割を果たすのかについて、猫様の飼い主さんに向けてわかりやすく解説します。


監修した専門家

Soshi Tanabe(@beeyan)

Soshi Tanabe(@beeyan)

博士(理学)。京都大学大学院理学研究科生物科学専攻を修了後、製薬会社にて研究職(非臨床安全性評価)に従事し、2023年4月にRABO入社。これまでに、神経科学及び毒性学領域(主にin vivo)での画像、行動、及び生体データを対象とした統計解析及び機械学習の技術開発を経験。猫様も好きだし、サルも好き。


「おなか」と「こころ・あたま」は、実は深くつながっている

大事な試験の前や緊張する場面で、急におなかが痛くなった経験はないでしょうか。これは、あたま(脳)とおなか(腸)が互いに影響し合っているために起こる現象です。

脳と腸は解剖学的には離れた臓器ですが、神経や血液中のホルモンなどを介して、絶えず情報をやり取りしています。この脳と腸の双方向のコミュニケーションのことを、脳腸相関と呼びます。腸には、消化管の動きを自律的に制御する神経系(腸管神経系)が備わっています。この仕組みは脳からの指令がなくても機能できるため、腸は「第二の脳」とも呼ばれます。さらに、気持ちを安定させる神経伝達物質として知られるセロトニンの約90%は脳ではなく腸で産生されており、腸が気分やこころの健康状態に深く関わっていることが知られています(文献1)。

脳腸相関は人間だけの話ではありません。猫様を含む多くの哺乳類で同様の仕組みが備わっており、猫様のストレスやリラックス状態にも、おなかの状態が深く関与していると考えられています。

ストレスがおなかに与える影響

猫様は、環境の変化に敏感な動物です。引っ越しや来客、多頭飼育での相性問題、工事音などの日常的なできごとが、猫様にとっては大きなストレス源になることがあります。

このようなストレスがかかると、あたまからおなかへの信号が乱れ、腸の動きが不規則になりやすくなります。その結果として、

  • 便の状態が不安定になる(軟便・下痢・便秘)
  • 消化吸収の効率が落ちる
  • 腸内細菌のバランスが崩れる

といった変化が起こりやすくなります。シリーズ「猫様と乳酸菌」の第1回でご紹介したように、腸内細菌のバランスが乱れると善玉菌が減り悪玉菌が優勢になりやすく、腸内環境のさらなる悪化につながります。

おなかの健康状態も、ストレスや睡眠に影響する

脳腸相関において特に重要なのが、この関係が双方向であるという点です。

あたまからのストレス信号がおなかに影響を与えるだけでなく、おなかの状態もまた、脳や自律神経に影響を与えます。腸内環境が乱れると、

  • ストレスを感じやすくなる
  • リラックスしづらくなる
  • 睡眠の質が低下する

といった変化が起こる可能性が指摘されています。これは腸内細菌が、セロトニンをはじめとする神経伝達物質の産生や免疫反応に深く関与しているためと考えられています。

つまり、ストレスが腸内環境を乱し、乱れた腸内環境がさらにストレスを悪化させるという悪循環が生じることがあります。

お腹の健康状態の悪い猫様のイメージ

猫様の乳酸菌とストレスの関係 ── 最新研究から見えてきたこと

シリーズ「猫様と乳酸菌」の第1回でご紹介したように、乳酸菌の摂取によりおなかの健康を整えることで、睡眠の質やストレスの軽減などの効果が得られることが、人間の研究では多数報告されています(文献1、2)。

同様のメカニズムは猫様でも働くと考えられていますが、健康な猫様を対象として乳酸菌摂取によるストレス軽減への効果を調べた報告はありませんでした。

しかし、最新の研究ではこのストレス軽減効果を示唆する報告も出始めていますので、今回はその内容を簡単にご紹介します。

コルチゾール ── ストレスを「見える化」する指標

腸内環境とストレスの関係を評価する方法のひとつに、コルチゾールというストレスホルモンの測定があります。コルチゾールは副腎から分泌されるホルモンで、急性・慢性のストレス状態を反映する指標として、人間や猫様のストレスを計測する研究に広く用いられています。

猫様の場合、血液に含まれるコルチゾールは急性ストレスの指標として有用ですが、毛(被毛)に蓄積されたコルチゾール(毛中コルチゾール)の濃度を測定することで、過去数週間〜数ヶ月にわたる慢性的なストレスの程度を推定することができます。採血を伴う検査とは異なり、この方法は苦痛が少なく、猫様の負担が少ないため、日常的な長期モニタリングにも活用できる点が注目されています。

実際、問題行動(トイレの失敗や過剰なグルーミングなど)を示す猫様では毛中コルチゾール濃度が高くなることが報告されており(文献3)、慢性ストレスの客観的な評価ツールとして活用が進んでいます

乳酸菌摂取により猫様のストレスホルモンが低くなる!最新の研究をご紹介

では、この猫様の毛中コルチゾールは乳酸菌の摂取によりどのように変化するのでしょうか?2026年2月に発刊された、一般社団法人ペット未病研究会の会報誌『未病の科学』第六号にて、これを調べた研究について報告されています(文献4)。

この研究では、国立研究開発法人農業・産業技術総合研究機構が保有する約6,500株もの乳酸菌コレクションの中から、免疫を活性化する働きが特に高い乳酸菌株を選抜し、加熱処理した死菌体として一般家庭の猫様77匹(摂取群61匹、非摂取群16匹)に1カ月間摂取いただきました。

その結果、乳酸菌を摂取した群では、摂取しなかった群と比べて、摂取後の毛中コルチゾール濃度が統計的に有意な低下が確認されました。このことは、乳酸菌の摂取により猫様のストレスが軽減されていることを示唆します。また、摂取をやめると効果は消えていくことも確認されており、継続的な摂取が重要であると考えられます。

※図:免疫活性化能が高い乳酸菌株の摂取後における毛中コルチゾール濃度の経時的変化(文献4を一部改変)。乳酸菌摂取群(61匹)と非摂取群(16匹)に群分けし、加熱処理により不活化した乳酸菌死菌体を含む粉末状サプリメントを摂取群に1日1回、1か月間経口摂取させた。摂取開始から1・2・3か月後の毛中コルチゾール濃度を計測し、各時点の平均値±標準誤差を示す(*: p<0.05、摂取群 vs. 非摂取群、対応なしt検定)。

さらに興味深いのは、この効果がすべての猫様に均一にあらわれたわけではなかった点です。もともとコルチゾール値が低い猫様にはほとんど影響がなく、もともとコルチゾール値が高かった猫様——つまり慢性的なストレスを抱えている猫様——でより顕著にコルチゾール値が下がる傾向が見られたと言及されています。これは、「元気な猫様をさらに元気にする」というよりも、「ストレスを感じている猫様のストレスを和らげる」効果である可能性を示しており、より理にかなった作用と言えるかもしれません。

健康なイエネコを対象に乳酸菌摂取と毛中コルチゾールの変化を直接評価した研究はこれまでなかっただけに、今後、猫様と乳酸菌に関する研究がさらに発展していく上での足がかりとなると期待されます。

「わが家の猫様のストレスが少し気になる」そんなときに、乳酸菌という選択肢が一助となるかもしれません。ぜひ健康なうちから、乳酸菌を使った健康習慣を検討してみてはいかがでしょうか?

参考文献

  1. Kezer G, et al. A comprehensive overview of the effects of probiotics, prebiotics and synbiotics on the gut-brain axis. Front Microbiol. 2025;16:1651965. doi: 10.3389/fmicb.2025.1651965
  2. Zhang J, et al. The efficacy of probiotics, prebiotics, and synbiotics on anxiety, depression, and sleep: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Psychiatry. 2025;25:1199. doi: 10.1186/s12888-025-07644-z
  3. Wojtaś J. Hair cortisol levels in cats with and without behavioural problems. J Feline Med Surg. 2023;25(2):1098612X221150624. doi: 10.1177/1098612X221150624
  4. 大池秀明. ペット向け乳酸菌の現在地点と個別化乳酸菌の展開. 未病の科学 2026; 6: 43-49

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ライター

Catlog総合研究所

Catlog総合研究所

「Catlog」シリーズを利用いただいている猫様から取得・蓄積された行動ログデータや体重・排泄データなどを活用した研究機関。 猫様の行動や習性をよりよく理解するきっかけとなる研究データをお届けしてまいります。


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