
シリーズ「猫様と乳酸菌」第1回 猫様に乳酸菌は必要?効果が実感しづらい理由・選び方まで解説
ヨーグルトやチーズ、キムチ、味噌など、私たち人間の食生活の中には、乳酸菌を含む食品が数多くあります。乳酸菌はおなかの調子や腸内環境を整えるものとして広く知られるだけでなく、現在では、睡眠の質の改善やストレス軽減、免疫ケアや美容ケアなどを謳った商品も数多く販売されています。
では、猫様の場合はどうでしょうか。最近では、猫様用の乳酸菌サプリメントやフードも増えている一方で、「本当に必要なのか」「効果はあるのか」と気になる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
猫様は人間と異なり、発酵食品から自然に乳酸菌を摂取する習慣がありません。だからこそ、フードやサプリメントを通じた意識的な腸内ケアが、日々の健康習慣として注目されています。
本記事では、猫様と乳酸菌の関係について、「期待できる働き」と「猫様ではまだ明らかになっていないこと」を分けて整理しながら、分かりやすく解説します。
監修した専門家

博士(理学)。京都大学大学院理学研究科生物科学専攻を修了後、製薬会社にて研究職(非臨床安全性評価)に従事し、2023年4月にRABO入社。これまでに、神経科学及び毒性学領域(主にin vivo)での画像、行動、及び生体データを対象とした統計解析及び機械学習の技術開発を経験。猫様も好きだし、サルも好き。
猫様の腸内には「たくさんの菌」が住んでいる
猫様の腸の中には、数えきれないほど多くの細菌が存在しています。これらをまとめて腸内細菌と呼びます。「菌」と聞くと悪いイメージを持たれるかもしれませんが、実際には体にとって欠かせない存在です。
腸内細菌は、単に「おなかにいる」だけではなく、それぞれが役割を持って働いています。例えば、
- 食べ物の消化を助け、栄養の吸収をサポートする
- 腸の動きを整え、スムーズな排便を支える
- 有害な菌の増殖を抑える
- 腸の粘膜を守り、外からの異物の侵入を防ぐ
といったように、腸内細菌は猫様の体の土台を支える重要な役割を担っています。
これらの腸内細菌は、大きく3つに分類されます。

ポイントとなるのは、この「日和見菌」の存在です。腸内細菌の中で最も多いのは日和見菌であり、善玉菌が優勢なときは体に良い働きをしますが、悪玉菌が増えると一気に腸内環境を悪化させる側に回ります。
ここで重要なのが、このバランスをコントロールしているのがおなかの免疫(腸管免疫)であるという点です。
腸の粘膜には、外から入ってくる細菌や異物を見極める免疫の仕組みが備わっており、
- 有益な菌は受け入れる
- 有害な菌は排除する
という選別を常に行っています。
健康な状態では、おなかの免疫が適切に働くことで、善玉菌が優勢なバランスが保たれているのです。
このバランスは非常に繊細で、日常のちょっとした変化で崩れてしまいます。例えば、
- 食事内容の変化:急なフードの切り替えや偏った栄養バランスにより、特定の菌だけが増減する
- ストレス(引っ越し・来客・多頭環境など):自律神経の乱れを通じて腸の動きが変化し、菌のバランスにも影響する
- 加齢:腸の働きや免疫機能の低下により、善玉菌が減少しやすくなる
- 体調の変化や投薬:下痢や食欲不振、抗生物質の使用などにより腸内細菌が大きく変動する
こうした要因が重なることで、善玉菌が減り、悪玉菌が優勢になりやすくなるなど、腸内細菌のバランスが乱れてしまうことがあります。このように腸内細菌は、単に存在しているだけでなく、「どの菌がどれくらいのバランスで存在しているか」が非常に重要なのです。
腸内環境が乱れると起きやすいこと
では、腸内環境が乱れると、猫様にはどのような変化が起きるのでしょうか。比較的よく見られるのは、次のようなサインです。
- 軟便や下痢
- 便秘
- うんちのにおいの変化
- 嘔吐や吐き戻し
これらは一見バラバラの症状に見えますが、実は「おなかの状態」と深く関係しているケースが少なくありません。特に猫様は、体調不良を隠す動物です。そのため、明確な不調として現れる前に、「排便の変化」としてサインが出ていることがあります。
こんな時はまず獣医師へ:受診を優先すべきサイン
腸内環境のケアとして乳酸菌を取り入れることを検討される前に、以下のような症状が見られる場合はサプリメントで対処しようとせず、まずかかりつけの獣医師にご相談ください。
- 血便・黒色便が続く
- 嘔吐や下痢が2〜3日以上続いている
- 急激な食欲低下や体重減少がある
- 元気がなく、ぐったりしている
これらは腸内環境の乱れではなく、別の疾患が隠れている可能性があります。乳酸菌はあくまで毎日の健康維持をサポートするための選択肢です。病気が疑われる場合は、早めの受診を心がけましょう。

猫様に乳酸菌を与えると腸内環境が整う理由
ここで登場するのが乳酸菌です。乳酸菌とは、腸の中で乳酸を作る細菌の仲間のことを指します。一般的には、乳酸菌は「腸内で増えて環境を整える菌」と考えられることが多いですが、近年ではそれだけではないことが分かってきています。例えば、乳酸菌やその成分はおなかの免疫に直接働きかけることが知られており、腸に届いた乳酸菌の成分が免疫細胞に作用することで、
- 免疫の過剰な反応を抑える
- 必要な防御機能を維持する
といった「免疫のバランス調整」が起こります。
その結果として、おなかの免疫が整うことで、腸内細菌のバランスが安定し、腸内環境が整う、という流れにつながります。
おなかに良いだけではない!乳酸菌が猫様の体全体に与える効果
乳酸菌の働きはおなかの中だけにとどまりません。近年の研究では、おなかの免疫を整えることでさまざまな体全体への良い影響をもたらすことが報告されています。
猫様で確認されている乳酸菌の効果
2025年に発表された総説(文献1)によると猫様でも以下のような効果が確認されています。

猫様ではまだ不明だが、人間で確認されている乳酸菌の効果
人間では、乳酸菌がストレス・睡眠・皮膚の健康に働きかけることを示す研究が多数報告されています(文献2~5)。猫様での直接的な検証はまだ途上ですが、哺乳類に共通する脳腸相関や免疫の仕組みを考えると、猫様でも同様のメカニズムが働く可能性が考えられます。

これらの研究はいずれも4週間〜12週間程度の摂取を継続した上で効果を評価しており、乳酸菌は一定期間継続して取り入れることが大切であることが示唆されています。
なぜ今、猫様の腸内環境ケアが注目されているのか?
人間は昔から、発酵食品を通じて自然に乳酸菌を摂取してきました。一方で猫様は、人間のように発酵食品を食べる習慣があるわけではありません。そのため、フードやサプリメントといった形で、意識的に腸内環境をケアするという考え方が広まりつつあります。
実際に、Catlogをご利用の飼い主さんにアンケート調査(※)を行ったところ、回答者の半数以上の飼い主さんが、これまで猫様用の乳酸菌サプリメントやフードを利用されたことがあるという結果もあり、飼い主さんの高い関心が伺えます。

※調査概要
- アンケート実施時期:2025年10月
- アンケート対象者:Catlog又はCatlog Boardをご利用中の飼い主さん
- アンケート方法:Catlogアプリにてアンケートフォームを送信
- 設問:これまでに猫様用の乳酸菌サプリメントやフードをご利用した経験はありますか?
- 回答者数:723名
猫様用の乳酸菌が「効果が実感しづらい」理由
乳酸菌への関心が高まる一方で、「与えてみたけど変化が分からなかった」「うちの子は食べてくれなかった」という声があるのも事実です。こうした経験から「効果が実感しづらい」と感じる飼い主さんも少なくありません。
乳酸菌の効果が実感しづらい背景には、いくつかの理由が考えられます。
①効果が出るまでに時間がかかる
腸内環境の変化には一定の継続期間が必要です。数日では変化を実感しにくく、数週間から数ヶ月単位での継続が推奨されています。
②猫様が食べてくれない
粉末の量が多かったり、風味が強かったりすると、食べ慣れたごはんを急に拒否するケースがあります。
③菌株の種類が合っていない
乳酸菌は菌株によって作用が大きく異なります。猫様の免疫に適した菌株かどうかが、効果の出方を左右します。
特に人間と猫様では腸の免疫に関わる分子(受容体など)が異なるため、人間向けに開発された乳酸菌が、そのまま猫様に最適とは限りません。
つまり、乳酸菌そのものに効果がないわけではなく、継続の仕方と菌株の選び方が結果を大きく左右すると言えます。
猫様用乳酸菌を選ぶ際のポイント
猫様用の乳酸菌製品は数多く販売されていますが、選ぶ際には以下の2点を特に確認することをお勧めします。
① 猫様向けに開発・検証された菌株かどうか
猫様用と表示されていても、人間向けや犬猫兼用の乳酸菌をそのまま転用した製品も少なくありません。猫様の免疫に適切に働きかける菌株かどうか、猫様を対象とした試験で検証されたものかどうかを確認しましょう。
② 猫様が継続して食べられる形状・量かどうか
どれだけ優れた成分であっても、食べてもらえなければ意味がありません。
粉末の量が少なく、においや風味の変化が少ない製品を選ぶことで、いつものごはんに混ぜながら無理なく続けることができます。
これらのポイントを参考に、この機会に乳酸菌を使った新しい健康習慣を始めてみてはいかがでしょうか?
参考文献
- Sivamaruthi BS, Kesika P, Chaiyasut C, Fukngoen P, Sisubalan N. A Review of Probiotic Supplementation and Its Impact on the Health and Well-Being of Domestic Cats. Vet Sci. 2025;12(8):703. doi: 10.3390/vetsci12080703
- Kezer G, et al. A comprehensive overview of the effects of probiotics, prebiotics and synbiotics on the gut-brain axis. Front Microbiol. 2025;16:1651965. doi: 10.3389/fmicb.2025.1651965
- Zhang J, Zhu L, Meng Q, Wang Z, Zhu H. The efficacy of probiotics,prebiotics, and synbiotics on anxiety, depression, and sleep: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Psychiatry. 2025;25:1199. doi: 10.1186/s12888-025-07644-z
- Hutchinson AN, et al. The effects of oral probiotic intervention on brain structure and function in human adults: a systematic review. NPJ Biofilms Microbiomes. 2026;12(1):6. doi: 10.1038/s41522-025-00872-x
- Woo YR, Kim HS. Interaction between the microbiota and the skin barrier in aging skin: a comprehensive review. Front Physiol. 2024;15:1322205. doi: 10.3389/fphys.2024.1322205
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ライター

Catlog総合研究所
「Catlog」シリーズを利用いただいている猫様から取得・蓄積された行動ログデータや体重・排泄データなどを活用した研究機関。 猫様の行動や習性をよりよく理解するきっかけとなる研究データをお届けしてまいります。











