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猫様の生活を豊かにするイノベーションへの挑戦。RABO機械学習チームを紹介します。

猫様の生活を豊かにするイノベーションへの挑戦。RABO機械学習チームを紹介します。

Machine Learning
最終更新日: 公開日:

Catlogの中核とも言える「AI」。今回は、そんなAIを日々開発する機械学習チームのメンバー( @sho_nitta, @massy, @beeyan )に、猫の行動分析と健康管理における日々の挑戦やデータ分析の重要性、チームで働く魅力などについて語ってもらいました。

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Sho Nitta (@sho_nitta)

大学では統計・プログラミング・金融工学を専攻。卒業後クオンツとしてヘッジファンドに勤めながら、フリーランスとして様々な機械学習プロジェクトに参加。金融時系列データ解析が得意。画像処理・音声処理・自然言語処理・売上最適化の業務経験あり。2020年7月RABO入社。RABOでは機械学習を用いたモデル開発業務を担当。

RABOの機械学習チームについて

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― まずは、各メンバーのバックグラウンドを教えてください。

@sho_nitta: 僕の学問的なバックグラウンドは、大学での統計学やパターン認識、そして金融工学に関する論文研究にあります。実務経験としては、クオンツの領域で正社員として勤務していました。RABOジョインのきっかけは、まっしーからの紹介。入社早3年半になりまして、現在は機械学習チームのリードを務めています。

@massy: 僕はRABOに新卒で入社しました。大学在学中から機械学習には強い興味を持ち、RABOでのインターンシップを経験しました。猫様に関するプロジェクトに魅力を感じ、求人サイトで「猫 機械学習」と検索してRABOを見つけたのがきっかけです(笑)。ここにいる3人の中では、実は僕が最も古株ですね。

@beeyan: 僕はもともと生物学を専攻しており、大学院博士課程では神経科学を研究していました。その後、製薬会社で安全性評価の仕事に携わりながら、動物行動とAIの融合に取り組んでいました。RABOに関しては入社前から知っていて、AWSカンファレンスでの代表のプレゼンテーションを見たこともあります。行動評価のシステムに関する記事を読んでいるうちに、RABOに対する興味が高まり、ジョインすることになりました。

― そもそも機械学習は、Catlogでどのような役割を果たしているのですか?

@beeyan: Catlogシリーズにおいて猫様の行動を判別するという点で中心的な役割を果たしていますね。これにより、猫様の様々な行動パターンを正確に理解できるようになっています。

@sho_nitta: そうですね、Catlogのアプリに表示されるすべての情報は機械学習を経由しています。このおかげで猫様に関する膨大なデータを処理し、有意義な情報に変換できていると思います。

@massy: 商品別で言えばPendantでは猫様の歩行、走行、毛づくろい、食事、水を飲むといった行動を識別しています。一方、Boardでは排泄行動と体重測定が可能です。これらの機能は、機械学習がなければ実質的には実現不可能と言えると思いますね。

@sho_nitta: そもそもデバイスから取得される生データや波形データを人間が直接解釈するのは、非常に難しいです。機械学習を利用することで、これらのデータから有益な特徴を抽出し、より精度の高い結果を得ることができています。過去の試行錯誤からも、機械学習を採用する優位性が明らかかなと考えています。

多様なつながりの中で進む、機械学習チームの仕事

― 典型的な仕事の流れはどんな感じなのでしょう?

@beeyan: 日々の仕事は主に「分析」作業に集中しています。新しい機械学習モデルの開発や既存ロジックの改善策について、仮説検証やシミュレーションなどに時間を割いている感じですね。流れとしては全体のスタンドアップミーティングから始まり、その後、チーム内での専門的な議論に移ります。専門的な内容を深く掘り下げるために、チーム別の打ち合わせも全体とは別に行うようにしています。

@sho_nitta: チーム別のミーティングを毎日設けている背景として、分析タスクを進める中でタイムリーに軌道修正を行うことも意識しています。各人のタスク進行に合わせて、柔軟に方向性や進め方を調整するようなイメージですね。また、全社目標であるOKR (Objectives and Key Results) への達成度を踏まえたリソース配分も重要です。僕たちはスクラム方式のような細かなタスク管理は行っていませんが、各個人のオーナーシップと自主性を尊重したチーム運営をベースとしています。

― なんと!RABOのOKRには、機械学習に関する項目が含まれているのですか?

@beeyan: はい!機械学習に関連するOKRは明確に設定されています。主に、新規機能の開発が予定通り進行しているか、既存のモデルの精度向上などが目標に掲げられている感じですね。

@sho_nitta: 機械学習チームとしては、限られたリソースの中で最も重要なタスクに集中するための指針としてOKRを活用していますね。それと同時に、僕たちのコアな業務に対する周囲の理解を深めることにも、OKRの存在は役立っているんじゃないかと思っています。OKRがあるからこそ必然的にチーム外への説明の機会も増えますし、さらにそこから派生して、他部門の社員が飼われている猫様からデータ収集を行う際のSlackでのコミュニケーションなど、チームの活動の積極的な透明化につながっているなと感じています。

― なるほど。具体的に、社内の他部門とはどのような連携なのですか?

@massy: 我々は主に3つのチームと緊密に連携しています。まずはBackendチームです。Backendチームとは、機械学習のAPIに関するシステム的な連携を行っています。次に、ハードウェアチーム。ここでは主にCatlogの各種ハードウェアから得られるデータの処理について協力し合っており、週に一度の対面コミュニケーションも実施しています。そしてカスタマーサポート (CS) チームとは、お問い合わせからのエスカレーション対応に関して日々協力しています。

@sho_nitta: Backendチームとの業務の棲み分けという観点では、機械学習の「モデル」に関連する部分を僕たちが担当し、インフラなどの面はBackendチームに依存させてもらっています。現在、機械学習処理に特有のインフラ面に関しては、チームの人的リソースの制約もあって、どちらかというとBackendエンジニアが得意な方法に頼ってはいます。将来的には処理に合わせてGPUサーバなどをより柔軟に利用できるようにしていきたいですが、現状は人的なリソースを最優先事項として調整しているところですね。

@beeyan: ハードウェアチームとは、特に新しいデバイスのリリースや既存のデバイスのロジック変更時に、その影響が機械学習にどの程度反映されるかについても連携しています。また何らかの問題が発生した際には、その問題を他チーム任せにせず、問題の切り分けと解決策の探索を協力して進めることを重視しています。

@massy: まさにそうですね。内製のハードウェアエンジニアとの連携はコミュニケーションコストを大幅に削減しているなと日々感じます。協力することで解決できる問題の範囲も、大きく広がっていますし。

@sho_nitta: 言ってみれば機械学習はデータがなければ何もできないのですが、今はチーム間の連携が非常にスムーズかつお互いの認識も合っていて、様々な作業が非常にやりやすいような気がしますよね。

@beeyan: CSチームとの関係では、お客さまから頂いたお問い合わせの機械学習モデル側の原因を調査することが主な役割です。CSチームが事前のヒアリングや調査をしっかりと行ってくれることもあり、その結果をもとに協力しながら問題解決を推進できていると思います。

@sho_nitta: そうそう、CSとのコミュニケーションでは「お客さまからの情報収集をCSが担い、その分析をMLチームが行う」という流れで効果的に連携していますよね。新機能リリース後のお客さまの声の収集などにおいても、この協力体制があるからスムーズだなと感じています。

― 貴重なお客さまからの声は、チームの仕事にどのように影響を与えているのでしょう?

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@massy: まずもって、お客さまからのフィードバックは僕たちにとって大きなやりがいとモチベーションの源です。愛猫との生活をより豊かにするために、新規開発や改善にもおのずと力が入りますね。

@sho_nitta: 現実問題として人的リソースが限られている中では、お客さまの生の声は非常に重要です。SNSで頂くようなご意見も含めて、フィードバックは実際の優先順位決定にすら影響を及ぼしています。大変ありがたいことにお客さまから頂く声は多いということもあり、それに基づいた優先順位付けは慎重に行っています。特に、バグや潜在的な問題の調査には迅速に対応するような感じで。

@beeyan: 最近では、嘔吐検知機能のリリースがありました。開発に苦労を重ねた分、この機能に対するお客さまの反応は特に印象的で、現時点ではまだ完璧な精度には至っていないものの、多くのポジティブな反応を頂けたことは素直に嬉しいです(笑)。

@sho_nitta: 逆にご指摘などを受けた場合、まずは量的な規模についてデータを確認します。定性的な確認にはSNSを参考にすることもあります。その上で、この問題がお客さま全体に共通しているか等を調査し、それに基づいて柔軟に優先順位に組み入れたりすることもあります。

“猫様専用”のAIづくりは、未知なるチャレンジの連続

― 「猫様」の行動分析においては、他の動物と比べて特別に考慮する点はあるのですか?

@beeyan: 以前、他の動物の行動分析に携わってきた経験から言うと、イエネコはその種としての特性、また飼育環境のバラエティの豊かさが他の動物とは異なります。例えば、食事や飲水の習慣や環境が、特徴的だったりします。猫様は決まった場所でトイレをするなど、独自の行動パターンがあります。Catlogは猫様専用デバイスということもあるので、これらの特性を十分に踏まえたモデル開発を行っています。

@massy: 直接的な犬との比較の実績はないものの、猫様には猫様特有の行動パターンが存在してますよね。

@sho_nitta: そう、たとえば猫様は非常によく寝ている動物ですよね。その分、多くの飼い主さんがそうであるように「寝ている時以外の行動」に注目し、その分析に重点を置くことになります。起きている時の猫様の行動は予想以上に変動が大きいので、単純で固定的な特徴だけに頼ることができないのが難しいところですね...!

― たしかに色々ありそうですね!その際に直面する最大の課題は何でしょうか?

@beeyan: そうですね...やはり最大の課題は、機械学習に必要な正確な行動データを得ることが難しいということに尽きるのではないでしょうか。人間が常に猫様を観察するわけにはいかず、またカメラで捉えられない行動も多いのですよね...

@massy: 猫様は個々の行動の境界が曖昧で、100%特定の行動として分類できない場合も多々あります。しかも、似たような行動が同じ猫様の中ですら見られ、これらを適切に分割すること自体がそもそも非常に難しいです。

@sho_nitta: それがゆえに、エンジニアリング的な観点では適切なデータセットを作成することが大きな課題になってきます。なので、お客さまから提供いただいたデータセットは非常に貴重で、過去実施した行動調査などで得られたデータについては現在も大切に使用しています。そして、それを踏まえた上でさらに難易度が高いのは、「それぞれの猫様の個性」の考慮ですかね...。

― ふむふむ、ちなみに猫様の行動に関して何か意外な発見などはありましたか?

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@beeyan: 「Catlog総研」として発表したレポートの一つに、季節による猫様の行動量の変化がありました。夏は行動量が減少し、冬になると活動量が増加するという。「猫はこたつで丸くなるんじゃなかったのか...!」と社内もザワつきましたね(笑)。

@sho_nitta: 排尿の時間や子猫様の成長曲線など、多くの猫様から得られるデータには本当に様々な発見が含まれていますよね!うちの猫の事例なんかで言えば、「僕が家に帰ると必ずトイレを使う」というような行動も、データを通して明らかになりました(笑)。これは猫様が人間の生活リズムに合わせていることを示唆しているのかも知れないと思って、とても興味深いです。

@beeyan: そうそう、猫様には一定のルーチンが存在するという。

@massy: こういった発見は、文字通り無数にありますね。そんな発見を集められている企業は、世界で初めてかもしれませんよね。

@sho_nitta: いやほんと。Catlog総研も、興味深いトピックが多すぎてどれを取り上げるか選ぶのが難しい(笑)

@beeyan: ですね。そもそもイエネコについての意外な側面を発信することも、我々のチームの重要な役割だと位置づけていますので、今後も渡辺先生のような専門家のアドバイスを受けながら、生態学的な視点からも興味深い情報を提供し続けたいと考えています。

@massy: 猫様オーナーの方々も、この「サイエンスとミステリアス」な側面に大いに関心があると思うんですよね〜

@sho_nitta: なにそれ上手い(笑)

― 猫様の異変を通知するアラートへの、機械学習の貢献や関わり等はどのようなものですか?

@massy: まず、獣医師の方からのアドバイス=獣医学の知見を基にしています。その上でデータ的な仮説を立て、場合によっては生のアンケート調査等を通じてロジックを精査していくような感じですね。普段から獣医師の方とも頻繁に意見交換を行い、情報連携を密にしていると思います。

@sho_nitta: そういう意味では我々のモデル作りに関しても、(時期によって業務は異なるものの) 最近はこういった広義のデータサイエンス的な業務が増えていますよね。機械学習という観点で基礎的な部分から、まさに応用的な内容へとアウトプットが進展しているんじゃないかなと。

@beeyan: ですね。そして将来的には、疾患兆候の検知だけではなく「生活の質」に関わるようなデータの二次利用や指標化を進めていけるとさらに興味深い。

@sho_nitta: 僕自身も猫様と暮らしていますが、24時間見守るわけにはいきませんので。一つ一つの行動の可視化はもちろん、たとえばストレスレベルの表示など、そういう世界にできたら凄いよなとも思っています。

「銀の弾丸」は存在しない。地道な積み上げの先に、イノベーションを切り開く

― プロジェクトの大きな壁を突破するために、レベルの高い問題解決が必要だった事例を教えてください。

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@sho_nitta: 先程の話のとおり、結局のところ最大の壁はデータセットの作成だと思います。本当に、この作業の難しさと重要性を痛感しました。猫様の食事行動を理解するために、動画を一つひとつ見ながら我々自身の体感値を磨いていくようなプロセスもありましたが、これらの地道な作業が結果として精度の改善や実験サイクルの加速に大きく貢献しました。最近リリースした嘔吐検知機能の開発でも、質の高いデータセットの作成が鍵となりました。機械学習自体の技術的な進歩も大切ですが、データセットの質がコアであると実感せざるを得ません。

@beeyan: Catlogのお客さまは愛猫のケアそのものに熱心な方も多いので、フィードバックが多く非常にありがたいです。とはいえ現状に満足せず、サービスとしてどのようにデータを提示すればさらにフィードバックを受けやすくなるのか?という点は、チーム内でも頻繁に議論していますね。

@sho_nitta: リリース後のプロセスとしても、地道なアンケート実施とSNSなどにおける定性的な評価の積極的な取り込みを行ったりしています。

― 機械学習エンジニアとして、長期的な目標みたいなものはありますか?

@massy: 僕たちのビジョンは「世界中の猫と飼い主が、1秒でも長く一緒にいられるように」ということです。自分自身、実家で暮らしていた猫様の体調が悪化していたことに早期に気付けなかった経験があります。機械学習を使って、そういった微妙な変化に気付けない問題を解消したいと思っています。共に暮らしていると気付きにくい変化に対して、技術を通じて早期に気付けるようにしたいです。

@beeyan: 現状、多くのお客さまが健康上の懸念から我々のサービスを利用されていますが、本音を言えば、健康問題が発生する前から利用してほしいと考えています。そのためには、より幅広いお客さまにそもそも興味を持ってもらえるサービスを企画し、提供することが重要です。そのために猫様のことをより包括的に理解し、その情報をわかりやすくサービスに落とし込み、伝えていくことが目標ですね。

@sho_nitta: Catlogとして一定の性能を出しつつも、現時点で全てのお客さまから高評価を得ているわけではありません。特に猫様の個性に関しては、まだまだ発展途上です。この部分を改善し、できるだけ100%に近づけたいと考えています。またチームのリードとしてはチームをさらに成長させ、RABOでの経験が次のキャリアにさえも大きく貢献するような、そんな強固なチームを作り上げたいと思っています。

CatlogのAIはプロダクトそのもの。プロダクト作りが好きな人、ぜひお話しましょう

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― 一緒に働きたい人はどのような人ですか?どのような人がRABOでの仕事に向いていると思いますか?

@beeyan: 「データを見て、その背後にあることを想像できる人」というのはあると思います。これまで存在しなかったようなプロダクトを作るためには、データに向かいながら想像力を膨らませて、それを現実化する力が求められますので。

@sho_nitta: ですね。強いエンジニアでありながらも狭義の技術面だけに興味を持っている人よりも、どのようなプロダクトを作りたいのか、お客さまに何を届けたいのかという思考を持つ人が向いているでしょうね。言い換えると、それこそデータセット作りなど、地道だけど根本的な部分から製品を考えることができる人。

@massy: まさに、泥臭く目の前のタスクを一つずつこなしていけるような人のイメージはありますよね。技術面を突き詰めることももちろん重要なのですが、それだけでなく、プロダクトの実現に向けた実行力を大切にしているということじゃないかなと思っています。

― 機械学習チームのみなさん、どうもありがとうございました!

RABO 機械学習エンジニャーの採用情報はこちらからご覧ください

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