私と、曜子と、”私たち”という意味のノートルと、ウリ。私たち2人+2匹は、ひとつのかたまりで暮らしてます(藤野貴子さん・森本曜子さんカップル/レズビアン)
藤野貴子さん、森 本曜子さんはレズビアンカップルで、メスのウリとオスのノートルという猫2匹といっしょに暮らしています。料理研究家で店や教室にと外での仕事が多い貴子さん、心理カウンセラーとして家で猫の世話をしながら仕事をする二人。ノートルはフランス語、ウリは韓国語で共に「私たち」という意味だとか。そんな2人+2匹の家族観は「ひとつのかたまり」といいます。
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藤野貴子
料理研究家・菓子研究家。キッチンスタンド兼コーヒースタンド「カストール」勤務。セクシュアリティはレズビアン女性で、パートナーの森本曜子さんと一緒に暮らしている。著書に「これがほんとのお菓子のきほん」(成美堂出版)ほか多数
名前を呼ぶとどこからでも「うにゃあ」と応える、おしゃべりなきょうだい猫の「ノートル」と「ウリ」といっしょに暮らしているのは、貴子さん曜子さんカップル。小さい頃から家に猫のいる暮らしをし てきた貴子さんと、貴子さんと一緒に暮らすようになってから猫愛に目覚めた曜子さん、おふたり+2匹の暮らしにおじゃましてきました。
最初は仕事上の知り合いだった二人。共通の知人を介してお互い女性が恋愛対象と知る
私、貴子は料理研究家・菓子研究家で、キッチンスタンド兼コーヒースタンド「カストール」(中央区日本橋)でお菓子作りをしたり、お店に立ったり、お菓子の教室を開いたりしています。もともと父がフランス料理研究家、母も料理研究家で、小さいころから両親のお店の手伝いをしたり、私もお菓子作りが好きで作っているうちに、今の仕事に就きました。
実家では小さいころから猫がいる生活でした。私が小学生のときに姉が猫を拾ってきたんです。小さいころの私にとって猫はかわいいとかっていう特別な感情がある相手というよりはきょうだいみたいに家に当たり前に一緒にいる存在でした。
その子とお別れしたあと紹介されて猫を2匹飼っていたのですがその子達は猫エイズで亡くなってしまって。物心が付いてから一緒に暮らした子たちだったのでショックだったのですが、そのあと保護猫を2匹引き取ることになりました。1匹は15歳で亡くなったのですが、もう1匹はいま14歳で実家で暮らしています。
実家を離れて一人暮らしをしてから自分では猫を飼ってはいなかったのですが、実家に行くと猫がいるので、猫欲?は実家で満たしていました。ただ、きちんと独立した自分の暮らしをつくるときには、猫といっしょに暮らしたいなとは思っていました。
パートナーに求めるものは、お互いを尊重でき、尊敬できること。
パートナーのようことは、付き合って2年くらい、一緒に暮らしはじめてからは1年弱くらいになります。ようこはいま心理カウンセラー・ライフコーチとしてコーチングのセッションやコラム・ポッドキャストなど自分らしく生きるための情報発信をしています。
もともと出会ったのは、まだようこが心理カウンセラー・ライフコーチになる前。ようこはバリスタとして東京で働いていて私がようこの働くカフェにお菓子を納めていたんです。当時はお互いのセクシュアリティは知らず、仕事上の顔見知りだったのですが、共通の友人づたいにお互いのセクシュアリティがわかってびっくりしました。でも当時はお互いに付き合っている相手もいたので、恋愛感情を抱くこともなく、友達のあつまりがあると顔を合わせるような距離感でした。
そんなあるとき、ようこからごはんに誘われて、なんだろう?と思ったら、バリスタを辞めてかねてから勉強していた心理カウンセラー・ライフコーチとして独立しようと思っているから、会社勤めではなく腕一本で働いている私に仕事の話を聞きたいというんです。はじめてそのときに二人だけで会いました。
話してみると、グループで会っていたときとは違って、とにかくすごく話してくるし、どんどんいろいろなことを聞いてくるんですよ(笑)。なので時間があっという間に経ってしまって「また近々会いましょうね」とその日が終わるんですが、またすぐに次の誘いが来るような感じで。友達に「さすがに相談されすぎなんだけど、どう思う?」って相談したくらいだったんです(笑)
そういう経緯でようこからの好意は感じていたのですが、私は付き合うからにはお互いへの感情やそれぞれの価値観をしっかり確認して、尊重し会える間柄でいたいと思っていました。それまでのようことの会話で、お互いに同じ方向を見ている人だなと感じられて、パートナーとして一緒に過ごしていこうか、ということになりました。
付き合い始めたタイミングで、ようこは1年間オーストラリアにワーキングホリデーに行くことが決まっていたので、帰ってきたら一緒に住むことにして荷物を我が家に預かることにしました。
自分たちを猫だと思っていない!? 話し相手になってくれる猫はパートナーであり2人のかすがい
猫のノートルとウリは私が飼っていて、2匹のためにこの物件を選んで住んでいました。そこにようこが引っ越してきたので、はじめは「新参者が来たな」みたいな目線でようこの様子を伺っていたのですが、ようこが家で仕事をしていることが多いので、ごはんをくれる人として認識されて、受け入れてくれました(笑)。
ようこは猫と暮らすのははじめてで、実家では犬を飼っていたんですが、家の中の先輩にちゃんと仕えるようにごはんをあげたり、トイレの世話をしたりして、まずはしっかり仲間と認めてもらって、抱っこしたりおしゃべりしたりしてくれるようになって、いまではすっかり猫派になったそうです(笑)
猫は自分のペースを大事にして過ごすものですが、とくに家の子たちは自分たちのことを、人間と同類だと思っているのか、私たちが話しかけると、まるでおしゃべりするようにうにゃうにゃこたえてくるし、ちょっとごはんが足りないと文句を言ってきたり、会話のコミュニケーションが多いんです。
なんかちょっと目つきも、人間と対等だと思って疑わない感じがしませんか? アイコンタクトの主張も強いんですよね。だから私たちも、飼っているというよりは、一緒に住んでいる、ひとつ屋根の下で共存しているような感覚です。
ようこも仕事柄、人の相談を受けたり、自分らしさを一緒に考えるコーチングを行ったりしていますが、猫たちの暮らしから学ぶこと、気づくことも多いそうです。そういう意味でも、飼っているというよりも、お互いを高め合うパートナーのような存在ですね。
私は基本、外に出ての仕事が多いのですが、たとえば新しい料理教室の内容を考えたり、メニューを試行錯誤しているときって、仕事モードになっているんですよね。たまにそのモードのまま家に帰ると、すぐにはオフモードにはなれなくて、自分でもピリピリしているなって感じることがあります。
でもそんなときに家に帰ると、ノートルとウリが出迎えてくれて、ごろごろ甘えてくるわけではなく「おつかれさま、早くゆっくりしなさい」と話しかけてくるような眼差しを向けてくるので、そこで気持ちを切り替えられるんです。
部屋は1LDKで一人一部屋あるわけでもないので、もし猫がいなかったら気持ちが切り替えられないまま、ピリッとした空気を持ち込んでしまっているかもしれませんね。私たちにとって、2匹の猫は頼れるパートナーで、家族で、私たちふたりをつなぐかすがいのような存在です。
ノートルは小さいころからおなかが弱かったので、体調管理をしたいと思ってcatlog boardを購入しました。うんちをしたという通知がくるとホッとして、重さをみて「ちょっと少ないな?」なんて 思ったりして、日々の様子が分かって心強かったです。
フランスの感じたありのままを大事にする生き方。「貴子は貴子らしく」と言ってくれる両親にも感謝
家族や友人にはカミングアウトしていて、ようこのことも紹介しているんですが、2023年の5月にはInstagramでふたりの写真付きで、恋人が女性だということをオープンにしました。お菓子の勉強でフランスに行っていたとき、学校には女の子と付き合っている女性がいたり、ホストファミリーの娘がレズビアンだと公言していたりして、「こんなにみんな自由に、ありのままの自分を大事にして生きているんだ!」と感激したんです。
それで、日本に帰国したあと、自分も女の子が好きだという気持ちに正直でいようと思ったんです。帰国してほどなく彼女ができて、実家暮らしの私はしょっちゅう外泊するようになり、当然親にも恋人がいることを気づかれたので、「よし、ちゃんと相手が女の子だと言おう」と思って、ひょんなときに会話の流れから「付き合っている相手がいるんだけれど、結婚できない相手なんだよね」と、ちょっと遠回しに伝えたんです。そうしたら両親が顔色を変えて、「不倫は辞めなさい!」っていうので、そうじゃなくて相手が女の子だとカミングアウトしたら、妙に安心されました(笑)。「貴子は貴子らしくいてくれればいいよ」と、私のことをいつも応援してくれる両親には感謝し ています。
ようこと一緒に住みはじめるにあたって、いま住んでいる街は同性パートナーシップ制度がないので同居人として登録するのに最適な書類がなくてちょっと苦労しました。私たちはこうしてひとつのかたまりで暮らしているので、それを認める認めないとかではなく、その関係のとおりに不都合なく暮らしていける様になってほしいですね。
ちなみにノートルはフランス語、ウリは韓国語で、どちらも「私たち」という意味です。私とようことノートルとウリ、”私たち”家族それぞれリスペクトし合いながら暮らしている今のスタイルを大事にしていきたいです。
Photo: Yuki Amakura
Planning / Direction: Takahisa Tanabe (KLKL inc)
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