運命のように出会った「そら」と「りく」。私たちにとって猫は、人と人を繋いでくれる存在(こうたさん・みゆきさん夫妻/FtM男性・パンセクシュアル女性)
FtMトランスジェンダーのこうたさんと、性別に関係なく 恋愛対象となるパンセクシュアル女性のみゆきさん。おふたりは戸籍上の夫婦で、保護猫だったそらちゃん、りくくんと2人+2匹で暮らしています。フレンドリーなお二人と、まわりの友人・家族の間にはその縁をつなぐ猫の存在がありました。
この記事に関連する人
こうた
FtM男性(トランスジェンダー)、現在会社員。福岡出身で2011年から都内に暮らす。みゆきさんと戸籍上の夫婦で一緒に暮らしている。
こうたさんとみゆきさんは戸籍上の婚姻関係にあるご夫婦。こうたさんは女性の身体で生まれましたが、自認する性は男性でした。性別適合手術を経て、戸籍上も男性として生活しています。みゆきさんは性別に関係なく恋愛対象となるパンセクシュアルの女性です。そんなおふたりは都内で、そらちゃん、りくくんという2の猫と一緒に暮らしています。おふたりのヒストリーと、2匹との出逢いには運命的なストーリーがありました。
思わぬタイミングが重なり、運命に導かれるように出会った「りく」と「そら」
もともと私とみゆきちゃんは福岡出身で、福岡で出逢いました。入籍は2012年なのですが、私は2011年に就職して東京に転居していまして、その後2014年にみゆきちゃんが転勤で東京に引っ越してきて同居が始まりました。
みゆきちゃんには、のちほど話しますが、ルームシェアしていた同居人と飼っていたりんちゃんという猫がいまして、東京に引っ越してくるときにりんちゃんも一緒に引っ越してきたので東京 での暮らしは2人+1匹だったんです。
ですが、りんちゃんとはお別れの日が来てしまいました。りんちゃんが亡くなったことは本当にショックで、他所の猫を見ても涙がでてくるし、みゆきちゃんも思い出すと悲しくなるからと言って猫が触れなくなってしまうくらいでした。でもふたりとも猫は大好きなので、いつか気持ちの準備ができたらまた猫と暮らそう、そのときは保護猫をお迎えしようと話していました。
そんなときに知ったのが、都内の保護猫活動の支援に積極的な喫茶店でした。そのお店は保護猫のシェルターのようになっていて、店内には保護された猫がいたり、里親募集のチラシも置いてありました。店にいる猫を眺めたり撫でたりしているうちに、だんだんと心の準備ができてきて、保護猫とのお見合いをお願いしました。
お見合いの日、会ったのがそらとりくでした。2匹はきょうだいで、東日本大震災後、福島で保護された猫のおなかの中にいた子でした。4匹きょうだいだったのですが、2匹は引きとり手がいるけれど、もう2匹を引き取ってくれないかと言われました。
本来ならば、里親になるにはきちんと飼えるか飼い主調査がありますが、保護士さんとは店で何度もお会いしていましたし、家の状況についてもお伝えしていたので、その日からトライアルで2匹をお迎えすることにしました。というのも、話を聞いたら、彼らが生まれたのはちょうど、前の猫のりんちゃんが亡くなった時期だったんです。
もともとその日に引き取ることを決めるとは思ってもいませんでしたし、2匹というのも考えていなかったのですが、このタイミングで出会ったのは運命なのかな、と思って、2匹を引き取ることにしました。
ちなみに、りんちゃんは誰にでもすぐなつく人懐っこい子だったのですが、りくとそらは真逆の性格で、誰かが来るとすぐにカーテンの裏に逃げ込んでしまいます(笑)。 一緒に住みはじめてもう10年近くになりますが、そらはどんくさくてで、りくは甘えん坊で、2匹ともとってもかわいい子たちなんですよ。
私は在宅での仕事が多いのですが、ずっとは様子を見ていられないので、体調管理もかねてCatlog Boardでうんちとおしっこをチェックしています。2匹いると、Catlog boardでうんちとおしっこを測定したとき、はじめはどっちのものか判別できなかったんですが、どっちのものかを修正反映するとだんだんとパターンで覚えてくれて、クイズみたいで面白いです。普段、日中は2匹とも良く寝ているんですが、元気に暮らしてくれていることがアプリを通じてもわかるので安心です。
幼稚園の頃から「男の子」だと意識。ユニークな仲間たちに囲まれて自由を謳歌
私は幼稚園児くらいのころから、自分は男の子だと思っていました。学校の制服は変えようがなかったので仕方なく着ていましたが、当時女性の就職というと制服を着た事務職が一般的で、このままずっと女性の制服を着つづけるのは無理だと思って、服装が自由な飲食業につきました。戸籍上は女性だということを知っているはずなのに、当たり前のように「彼女いるの?」と聞いてくる人もいたり、そういう意味では多様性が当たり前のような環境に恵まれました。
親も、僕が男性っぽい格好をしていても、特になにも言わなかったです。はっきりと両親にカミングアウトしたのは、それぞれ別のタイミングでした。母には手術前、父には戸籍上の性別変更をする前にしました。
その時、本心でどう思ったのかはわかりませんが、「誰かにそうしろと言われて流されるのではなく、自分で決めてやることなら応援する」と 、受け止めてくれた言葉を返してくれました。両親にパートナーを紹介したときも、すぐに家族として受け入れてくれました。
性別の垣根を感じさせない、みゆきさんと「りんちゃん」との出逢い
みゆきちゃんと出会った店は、福岡の行きつけのバーでした。いろいろなセクシュアリティの人が集まるお店だったんです。みゆきちゃんは性別に関係なく恋愛対象となるパンセクシュアルを自認しているのですが、出会った当初から自分の恋愛感情が人と違うような気がしていて、特に結婚したくないと思っていたそうなんです。そういう経緯もあって、レズビアンやゲイの友達も多くいて、その店が居心地よかったそうです。
イベントがきっかけでみゆきちゃんと知り合って、性別の別け隔てなしにだれとでもフラットにコミュニケーションをしている感じがいいなぁと思って僕からアプローチしました。みゆきちゃんは性別は問わずですが、年上の背の高い人が好 みだと言っていて、僕は年下で背も低いので好みと真逆なんです。当時僕はまだ戸籍が女性だったので、僕と付き合っても結婚も子供も考えなくていい、というのが、僕と付き合うきっかけだったみたいです(笑)。
付き合いはじめたころ、みゆきちゃんは友達とルームシェアをしていました。みゆきちゃんと同居人が飼っていたのが前の猫のりんちゃんです。そのルームシェアの部屋には、お互いのパートナーも入り浸っていたので、ヒト4人+りんちゃんの暮らしでした。りんちゃんはすべての部屋を行き来して、みんなでりんちゃんをかわいがってました。
私たちの間では、先に結婚した方がねこの”親権”を手放すという約束をしていました。結果、友達が先に結婚を決めたので、約束通りりんちゃんは私たちと一緒に暮らすことになりました。
りんちゃんがいたから猫との暮らしをするきっかけができて、りんちゃんとお別れしたタイミングで生まれた子猫たちを引き取ったのが、いま一緒に暮らしているそらとりくで、まるでひとつの流れのような運命のよう な縁を感じています。
人と人とのご縁の間には、いつも猫がいる。いつか沢山の猫に囲まれて暮らしたい
そういうわけで私たちは猫と、人との縁がきっかけで出会ってきました。好きだなって思う人のところに猫がいたり、猫好きがきっかけで気の合う人と出会えたり。だから私たちにとって猫は、なにかしら意味があっていま私たちの近くにいてくれている存在。子供とも、恋人ともちょっと違う、「なんかいる」っていう感じです。
猫との出逢いの数だけ、素敵な人との出逢いもある気がしているので、将来はもっともっとたくさんの猫と暮らしたいです。たとえば一棟マンションを借りて、その中にはりくとそらと、他にも何匹も猫がいて、住んでいる人みんなで飼っている、みたいな感じで。イメージするだけでワクワクしますね(笑)。
Planning / Direction: Takahisa Tanabe (KLKL inc)
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