東ちづるさん

「猫様といつまでも暮らせる社会へ」東ちづるさんが考える、インクルーシブな社会とは?

毎年6月はプライド月間。Catlogサービスを展開するRABOは「すべては、猫様のために。すべての、猫様のために。」をダイバーシティ&インクルージョンのステートメントとして発表。LGBTQ+を含めたすべての猫様と家族を応援しています。そして今回スペシャルインタビューとしてLGBTQ+アライとして、そして愛猫家としても有名な俳優・東ちづるさんが登場!愛猫とのライフスタイルから、ご自身が考えるインクルーシブな社会について聞きました。

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東ちづる(俳優・一般社団法人Get in touch代表)

エンタメを通じて、誰も排除しない『まぜこぜの社会』をめざす一般社団法人「Get in touch」を設立。代表として活動中。東京2020オリンピック、パラリンピック競技大会 公式文化プログラム公式映像「MAZEKOZEアイランドツアー」の企画・構成・キャスティング・演出・衣装デザイン・総指揮を担当。2023年TEDxKyotoにスピーカー登壇。6月16日にはLINEキューブ渋谷にてイベント「まぜこぜ一座」の公演『月夜のからくりハウス」と、映画『まつりのあとのあとのまつり~まぜこぜ一座殺人事件~』を開催予定。

イベントチケットはこちら:https://t.livepocket.jp/e/mazekozeGet in touchホームページ:https://www.getintouch.or.jp

新宿二丁目で運命的な出会い!愛猫とのライフスタイル

──東ちづるさんは芸能界きっての「愛猫家」としても知られています。猫様との生活について教えてください。

東ちづるさん(以下:東):いま飼っている猫は、メインクーンとサイベリアンの2匹です。猫を飼い始めたきっかけは本当に突然で、もともと私が猫好きで、夫が犬好きだったのですが、ある夜「それなら犬みたいな猫を飼うのがよさそうだね、それなら種別はメインクーンかな」なんて話していたんです。

そうしたら次の日に新宿二丁目で打ち合わせしていたときに、たまたまメインクーンのブリーダーさんに会ったんです!
その方はゲイで「パートナーと一緒にブリーダーをしている」と自己紹介されて、聞けばちょうど赤ちゃんが生まれたばかりだと言うんです。なんという偶然なんだろう!(笑)って。

──そんな偶然あるんですね!運命としかいいようがないというか。

東:そうそう!すぐに伺ったら案の定一目惚れして(笑)、我が家にお迎えすることになりました。
そこからメインクーンのピースを飼いはじめました。つい最近、保護猫だったサイベリアンのラブをお迎えして。いまは私と夫、そして2匹で仲良く暮らしています。

サイベリ�アンのラブちゃん
サイベリアンのラブちゃん
メインクーンのピースちゃん
メインクーンのピースちゃん

東:私は田舎で生まれ育ったので、物心ついた時から猫はもちろん、犬、鳥、うさぎ、ヤギと、あらゆる動物に囲まれた家で育ったのでペットは慣れっこ。
一方の夫は、猫を飼うのははじめて。先ほど話したように最初は「ペットを飼うなら犬がいいな〜」なんて言っていたのですが、いざ我が家に猫がきてみたら2日目には態度がガラリ(笑)。すぐにメロメロになってました。

夫は毎日ブラッシングをしてくれたり、本当によく面倒をみています。家に帰ってきたら「帰ってきたよ」と言って、私ではなく先に猫たちの名前を呼びます。寝るときも、私ではなく猫たちの名前を呼んでベッドに向かうくらい。
猫を飼い始めたことで、彼自身が大きく変わりましたね。

東ちづるさん
「猫たちは、子どもでもあり、夫婦の緩衝材であり、生活の張りでもあります」

東:私の性格的に、猫の自由気ままな感じがすごくフィットするんですよね。癒しでもあり仕事の励みでもあり、時には躾けたりすることもありますが。
猫は困っている人や弱い人がわかるんですよ。夫は長らく闘病生活をしていたのですが、弱っている時やパニックの時、ネガティブな時なんかは側にきてくれる。だいぶそこに救われたと思います。
その一方で、人間のストレスを吸収しやすい存在でもある。
なので私たちも、この子たちのために、前向きにポジティブに毎日過ごさなきゃな、と思います。その意識もあってか、以前よりも夫婦仲がすごく良くなりました。
わたしたちにとっての猫たちは、子供でもあり、夫婦のいい緩衝材でもあり、生活の張りでもある、という感じですね。

“感動ポルノ”にならないために。自分ができる社会活動を

──ここからは東さんの社会活動について聞いていきます。一般社団法人Get in touchの代表としてさまざまな社会貢献活動をされていますよね。活動をはじめたキッカケとは?

東:活動をスタートしたのは32年前です。当時、報道番組の司会をしていたとき、ディレクターが「政治と報道は困った人の為にある」と教えてくれたんですね。その言葉がずっと胸に残っていました。私はタレントであって何の専門家でもない、でも私自身を活用して社会に発信することができるんだ、と思えたキッカケでした。

またあるとき、テレビ番組で17歳の方の白血病のドキュメンタリーを見たことがありました。その番組にはすごく感動したんですが、実は彼が言いたかったメッセージが、番組では一切紹介されなかったことを後から知って。伝えたいことは伝わらず、ただお涙頂戴の“感動ポルノ”になってしまっていたんです。
ちなみに彼が勇気を出してテレビ出演してまで伝えたかったメッセージは「骨髄バンクの存在をみんなに知って欲しい」ということでした。ちょうど骨髄バンクができた年だったんですよね。
私はそれを知って、いてもたってもいられなくなって、彼の連絡先を調べてコンタクトを取ったんです。そこから骨髄バンクの啓発活動をするようになりました。

東ちづるさん
「タレントである私自身だからできる発信を」という思いから活動する東さん

──東さんの行動力がすごい…!当時は芸能人が社会貢献活動をすることに対して、うがった見方をする人も多かったのでは?

東: そうなんです。日本の芸能界では、チャリティーやマイノリティ支援などをしていると、「あ〜、なんか好感度上げたいんですね」と売名目的じゃないかと見られたり、「選挙に出馬するんじゃないか」など言われたり。
周りにそう言われるのが煩わしかったので、長らく表には出さずに活動していたのですが、2011年に発生した東日本大震災の際、避難所でマイノリティがないがしろにされている状況を見て、これはもう表立って発信しなきゃいけないと決心しました。それから一般社団法人Get in touchを立ち上げました。

Get in touchのコンセプトは「まぜこぜの社会」。

障害、セクシュアリティ、国籍など、多くの人と「ちがう」ということがハンデになる現実がありますが、ちがいをハンデにするのではなく、特性としてアドバンテージにできる。ちがいをおもしろがる社会がいいなと。

わたしたちは支援団体ではなく、「クリエイター集団」です。アートや音楽、映像、舞台を使って、エンターテイメントとして人々に届けていきたい。

「なぜエンタメなのか?」というと、実はそもそも歌も演劇もアートも、社会的なメッセージの発信からスタートしているんです。たとえば演歌の“演”は「演じる」じゃなくて「演説」からきているという説もあるらしいです。

お芝居も、アートも音楽も、常に社会に対しての発信だった。なのに日本では「ミュージシャンは社会的/政治的発言をするな」という人がいますよね。それって本末転倒じゃないの?と。

だから私はエンタメを、目的ではなく「伝える手段」として使っています。

社会貢献ではない、自分自身のためにする行為

東:この活動をしていると「東さんは社会貢献していて偉いですね」と言われたりしますが、結果的にそうなればいいですが、まずは私のために活動をしています。

たとえば、私が高齢者になったり、病気をしたり、障害を持ったときに、何かを諦めたりガマンして生きるのは嫌なんですよ。街に出たいし、エンタメも楽しみたいし、たくさん旅行もしたい。なにより、どんな状況、どんな状態でも、猫たちと快適に暮らしたい!

例えば猫との暮らしでいうと、高齢になるとペットを諦める人が多いですよね。実際にうちに来た保護猫もそうで、ご高齢の方が飼っていく自信がないって手放されたんです。ご本人にとって愛する猫との別れは、それはもうすごく辛かったと思うんです。

──よく日本は諸外国に比べてペットを飼う環境がかなり厳しいと言われますよね。

東:そうなんです。たとえば高齢者施設でペット可能な物件は本当に少ないです。アレルギーの問題なんかはありますが、日本の住宅事情はペットに厳しすぎて、私もいつか愛猫を手放すことになるかもしれないと思ったら…それが今の心配事です。

先進国では「アニマルセラピー」という考え方が当たり前にあって、高齢者施設から病院、刑務所までペットがいる施設はかなり多いんですよね。ペットと暮らすことによって幸福度がかなり上がることがわかっている。だから本人がどんな状況であってもペットと暮らせる状態を支えていける社会でないといけないと思います。

バリアフリー化すれば、みんなが幸福になる

東:特にこれからは“超”高齢化社会に突入しますよね。高齢者が増えることで、耳が聞こえにくい人、目が見えにくい人、歩くのが難しい人…がたくさん増えます。でも私たちはバブルを経験した”遊んできた世代”なので、体が不自由になったからといって何かを諦めるのは辛いんです。

だからバリアフリーでインクルーシブな社会を今から作っておいた方がいいと思っています。
たとえば、今度6月16日に、映画上映+パフォーマンスイベントを開催するのですが、そこではイベントの“完全バリアフリー化”を目指しています。

映画まつりのあとのあとのまつり まぜこぜ一座 殺人事件 社会派コメディーサスペンス映画と一夜限りの歌とダンス 日時/2024年6月16日(日) '1回のみ上映&公演'会場/LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂) 16時開場 17時開演
映画上映+パフォーマンスイベント『「まぜこぜ一座」の公演『月夜のからくりハウス」と、映画『まつりのあとのあとのまつり~まぜこぜ一座殺人事件~』』。東京・渋谷の「LINEキューブ渋谷」にて6月16日に一夜限り開催。

東:よく「みんなが楽しめる」という謳い文句がありますが、その“みんな”の中に「私は入ってませんよね?」って人が実はいっぱいいるんです。だからこそ、その壁を取っ払いたい。イベントでは、音声ガイド、バリアフリー字幕、手話通訳、文字通訳の手配をして、車椅子もストレッチャーもすべてOKにしてるんですよ。
驚いたことにチケットは、目の見えない人、耳の聴こえない人、車椅子席の順に売れているんです。ふだん舞台に行けない人たち、我慢してる人たちがいっぱいいるって事の現れですよね。誰でもウェルカムにしているからこそのことだと思っています。

もちろん完全バリアフリー化をするとかなりコストがかかります。ただみんながやり始めたらコストも下がって、しっかり経済も回り始める。そうすれば本人の幸せも上がるし、経済的にも潤う。社会全体にすごくいい循環が生まれると思っています。

LGBTQ+の話は「人権」の話

──6月はプライド月間ですが、東さんは長年LGBTQ+をサポートしてきた力強い存在。プライド月間にあたりメッセージをいただきたいです。

東:そうですね。ただ、先ほどの話とも通じるのですが、私はマイノリティに対して、「サポートしましょう」や「理解しましょう」という言葉は、少し違うかなと思っていて。

「理解しましょう」という言葉はすこし上から目線に感じるし、なにより「支援する人/支援される人」という構造を作り出すこと自体がそもそもボーダー(境界線)になるのでは?と考えるからです。

お互いに助け合う、お互いに支援し合える社会を作りたい。「私が困った時には助けてね」と言い合える社会にしましょうね。そんな「お互い様の社会」をイメージしています。

LGBTQ+に関して言えば、一部の人はLGBTQ+の話を“性的な話”だと勘違いしていますが、“人権の話”なんですよね。よく同性婚に関しても「議論して認めていくべきだ」という声がありますが、そもそも議論が必要であるという前提が違うと思っています。だって人権問題ですから。

というのも、誰かが誰かを好きになるという感情に対して「賛成/反対」と他人が口を出すっておかしいと思います。それって、私と夫の関係に対して他者があれこれ介入するのと同じ行為ですよね。人が人を愛する、誰かを好きになる自由は当たり前に保障されるべき。LGBTQ+の家族も当然”家族”です。

とはいえ、まだまだ同性婚を含めた法整備が整っていない状態。これからも「腐らず、諦めず、焦らず、がんばり過ぎず」多くの人とつながりながら進めていきたいです。
行動するといろんなハレーションもあるとは思いますが、少しづつ前に進めていくしかないと思います。LGBTQ+を含めたすべての家族と、その猫たちが暮らしやすい、インクルーシブな社会であることを願っています。

東ちづるさん
LGBTQ+を含めたすべての家族とその猫たちが暮らしやすい社会を、と語る東さん

Photo: Yuki Amakura

Text: Makito Uechi

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