株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
子猫用のケージですが、いつまで使用し続ければいいのか悩みますよね。そもそもケージは必要なのかという議論すらあります。
一般的には、子猫の飼育にはケージの用意が推奨されます。それは、猫を閉じ込める、という目的ではありません。結論から言うと、ケージは少なくとも生後5ヶ月程度までは用意しておくことがおすすめです。 今回は、ケージ卒業に移行する時期や手順、注意点を紹介します。そして、ケージの選び方も紹介します。
監修した専門家
株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
動物病院勤務 獣医師
獣医師。公務員獣医師として家畜防疫、牛の改良繁殖に携わる。その後はアミカペットクリニック、アカデメイア動物病院にて小動物臨床に従事。株式会社RABOにてWebコンテンツの監修も行っている。
いつまで使う必要があるか、の議論の前にそもそもケージが必要なのかをクリアにしておかなければなりませんよね。ケージに閉じ込めるのはかわいそう、という意見はとてもよくわかります。実際、そのように見えるのも無理はありませんし、そのような考えも間違いではないはずです。
一方で、獣医師としての視点では、やはりケージは必要です。それには、以下の理由があります。
生後間もない子猫の場合は、元気いっぱい・好奇心いっぱいです。しかし、まだ身体も小さく、室内を自由に行動させてしまうと怪我や事故を起こしてしまうことも可能性があります。
まだ社会経験の少ない子猫は安全な場所と危険な場所を区別できないため、自ら危険な場所に入り込んでしまうこともあります。自力で戻れず、隙間に挟まったまま数時間がすぎてしまうというトラブルは意外に多いものです。このようなトラブルを防止するためにも生後3ヶ月齢の子猫はケージ飼いをすることがおすすめです。
また、安全面として、「誤飲の防止」も重要な役割のひとつです。子猫は小さなおもちゃや、落ちているお菓子や薬などを食べてしまうこともあります。全て片付けているつもりでも、思わぬものを誤飲する事故は後を絶ちません。四六時中みているのは難しいので、お留守番の時などにとても役立ちます。
猫は、 驚いたり恐怖を感じると、本能的に身を隠します。例えば、自宅に訪問者がいると、猫にとってはことさらに警戒することがあります。雷雨や、花火、工事音なども同様です。こうした時、自分だけのパーソナルスペースが必要です。
子猫は落ち着きたいとき狭くて暗い場所を好むため、ケージの中でも段ボールなどで囲われた場所を作ってあげるのもおすすめです。
多頭飼育の場合は、先住猫との相性も重要です。多くの成猫は、元気すぎる子猫を警戒します。急にニューフェイスが登場するため、自分の場所を脅かされるのでは、という思いもあるでしょう。一方、子猫にとっても同様で、見知らぬ猫への好奇心は示しますが、同時にストレスになることも多く、場合によっては攻撃されてしまうこともあります。
忘れがちですが、感染症対策としても重要です。子猫が消化管に寄生虫を持っていたり、先住猫が猫カゼなどのウイルスを持っていると、双方に感染させてしまいます。こうした意味でも、まずはケージを準備することが重要です。
日常生活でも自分だけの場所があることは、猫にとって重要です。また、感染症のトラブルや事故防止にも大事です。「ケージに閉じ込める」という意味ではなく、「猫にとって必要な場所」として、ケージを用意してあげると良いですね。
子猫が放し飼いで問題なく生活できるようになったら、ケージを撤去したいと考える飼い主さんも多いかもしれません。しかし、ケー ジは子猫が長い時間過ごす安心できる場所です。いきなりケージを撤去すると、不安になる子猫もいるかもしれません。しばらくは撤去せずに、設置したままにしておくのがおすすめです。
また、実は成猫になってもケージが活用できる場面が意外に多くあります。
飼い主さんが留守の時間は心配ですよね。飼い主さんがいない間にあらゆるものに興味を示して室内を散策するでしょう。 外出前に危険なものは片付けたつもりでも、思いもしないものに興味を示してしまうこともあります。狭いところに潜り込んで動けなくなる事故や誤飲も起こりやすいです。
成猫に比べると、子猫は体力や免疫力が弱いため病気にかかりやすいです。また、病気になるとすぐに衰弱してしまうため、 注意深く対応しなくてはいけません。 子猫が病気になったときに、ケージがあると便利です。とくに先住猫がいる場合は、病気になった子猫を隔離することで感染を防げます。また、状態を観察するという意味でもケージがあると状態を把握しやすいです。
自宅にいるからといって、常に子猫の様子を見守るのは難しいです。夜中はもちろん、料理中や掃除中など、目をはなす時間はケージに入ってもらう方が安心です。
猫には、縄張り意識があります。新しく迎えた子猫が自分の縄張りに入ると、先住猫は反抗して攻撃することも。先住猫の警戒心が強い場合は、子猫が怪我をしてしまう可能性があります。子猫も新しい環境に不安を感じていますが、先住猫にとってもそれは同じです。先住猫に過度なストレスがかからないように、ケージをうまく活用しましょう。
台風や地震など、日本は自然災害が多い国です。自然災害が起こることを想定して、子猫の安全を飼い主さんが確保しておかなければいけません。たとえば、地震が起きてモノが落ちてきた場合、ケージがあると子猫を落下物か ら守れるので安心です。