株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
人間と同じように、猫にもニキビができます。主に口元やあごにでき、放っておくと重症化してしまう可能性があります。ではなぜ、猫にニキビができるのでしょうか。本記事では猫のニキビについて、具体的な症状や原因、予防とケアの方法を解説します。
監修した専門家
株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
アリアスペットクリニック 院長 / 臨床獣医師
神奈川県の地域中核病院でジェネラリストとして経験を積みながら、学会発表も行う。2019年アメリカ獣医内科学会で口頭発表。アニコムホールディングスに入社後は#stayanicomプロジェクトの中心メンバーとしてコロナ禍のペット救護に当たる。2020年から現職。得意分野は運動器疾患、猫使い(使われ)。
猫にもニキビができることをご存じでしょうか?「猫ニキビ」と呼ばれる症状には、医学的に「ざ瘡(ざそう)」という正式名称がついています。ざ瘡(猫ニキビ)は、軽い皮膚炎から始まりますが、二次的に感染が起きて炎症が広まる可能性もあります。また一見すると、ただの汚れのように見えてしまうため、対処が遅れてしまうこともあるでしょう。
猫ニキビはどのような場所にできるのでしょうか? 本章では、猫ニキビができる場所やその特徴、症状の程度について解説します。猫ニキビができやすい場所はマメにチェックし、症状が重い場合にはすぐに動物病院へ連れていってあげましょう。
猫ニキビは、主に口元やあごに症状が現れます。黒い砂粒のようなものが下あごに付着していることで気付くケースが多いでしょう。口の周りはマーキングのための皮脂が多く出る箇所であるため、猫ニキビができやすいと考えられています。口周りに黒いポツポツが確認できた場合は、猫ニキビを発症している可能性が高いです。またポツポツの他に、脱毛や腫れ、出血、かゆみ、皮膚の硬化といった症状が見られることもあります。
ちなみに、似たような症状が尾の付け根に見られる場合もあり、これは「尾腺炎」といって未去勢のオス猫に多く見られます。
症状の程度は様々ですが、基本的に大ごとになることはあまりありません。軽度なものであれば黒いポツポツがついているだけで、かゆみもないことがほとんどです。脱毛や赤み、かゆみがある場合は悪化し始めているかもしれません。ひどく搔きむしったり、細菌感染をおこしているような場合には比較的重度といえます。特にかゆみがある場合は、放置すると自分で傷つけてしまい、重症化することもあるので、早めに動物病院を受診しましょう。
猫ニキビは、猫の全ての皮膚疾患のうち3.9%という研究(米国)もあり、世界中で一般的な病気として知られています。ほぼ全ての年齢で発症しますが、中央値は4歳程度という報告もあります。
同じ研究によると、見られやすい病変は、黒いぷつぷつ ;コメド(73%)、脱毛(68%)、痂皮(55%)、丘疹(45%)、紅斑(41%)で、痒みは患猫の35%で報告されています。
※参考文献
Feline dermatology at Cornell University: 1407 cases (1988-2003)
An evaluation of the clinical, cytological, infectious and histopathological features of feline acne
そもそも、猫にニキビができてしまうのはなぜでしょうか?
猫にできるニキビの原因としては「過剰な皮脂」「ストレス」「免疫力が弱まっている」「口周りの汚れ」といったものが挙げられます。
猫がさまざまな場所へ自分の顔やあごをこすり付ける行動は、飼い主さんにとって見なれた光景ですよね。この行動はマーキングの一種であり、猫は自分の顔やあごから出る分泌物によって、自分の臭いをつけて縄張りを示しています。この分泌物を出す「皮脂腺」が詰まる、あるいは過剰に分泌されてしまうといったことが原因となり、猫ニキビが生じるとされています。
また感染や炎症によって皮膚のバリアが働き過ぎてしまい、皮脂の分泌が過剰になる場合もあります。
このように、皮脂の過剰は、皮膚になんらかのトラブルが起きているサインかもしれません。顔周りや体がベタついていないか、スキンシップをしながらチェックしてみましょう。
猫は環境の変化に弱い動物です。そのため引越しや新しい猫を迎えたあとなどに、強いストレスを感じてしまうことがあります。そのようなストレスは、免疫力の低下を引き起こし、猫ニキビが発生する原因と考えられています。猫の生活環境を見直して、ストレスを和らげるか、解消できるように工夫してあげましょう。
免疫力が弱くなってしまう原因は、ストレスだけではありません。加齢にともなって低下する場合や、薬によって一時的に免疫力が下がる場合、猫エイズが発症した場合なども当てはまります。このような場合には、皮膚のバリアが弱くなり、細菌や寄生虫の感染、炎症などのトラブルが起こりやすくなるため、猫ニキビが発生しやすくなります。
関連記事:【獣医師が徹底解説】猫エイズの感染経路や症状、予防法など紹介。猫白血病との違いも解説
口周りの汚れが、猫ニキビの原因になることもあります。ウェットフードや液状のおやつなどが残っていると細菌が繁殖しやすくなるためです。特にあごの下は自分でキレイに保つことが難しいので、食後に汚れていないかチェックしてあげましょう。
また、ごはんや水の容器が汚れていたり、容器の素材自体にアレルギーを起こしてしまう場合(プラスチックやステンレスなど)にも、感染や炎症により猫ニキビが生じてしまうことがあります。容器は傷がつきにくく、アレルギーを起こしにくいとされる陶器やガラス製のものがおススメです。
ほかにも可能性があるものとして以下が考えられています。
ウイルス感染との関連性
環境アレルギー
ダニ
白癬
参考文献)Jacqueline Brister, DVM (2019). Feline Acne
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<相談の例>
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ごはんを食べてくれないけど、どうしたらいい?
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では、猫をニキビから守ってあげるためには、どのような点に気をつければ良いのでしょう。
残念ながら猫ニキビについては、「これに気を付ければ大丈夫!」という確実な予防法はありません。これは猫ニキビの原因が過剰な皮脂分泌や、触れるものに対するアレルギーであったりと、猫自身の体質が大きく関わるためです。
ただし、口の周りを清潔に保つことはニキビの発生頻度を減らしたり、重症化を防ぐ方法として有効です。ウェットフードなどが口についていたらすぐに拭き取ってあげる、定期的に顔を拭いてあげるなど、キレイ好きな猫ちゃんが清潔でいられるように、サポートしてあげまし ょう。