株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
「Catlog」シリーズを利用いただいている猫様から取得・蓄積された行動ログデータを活用した研究機関「Catlog総合研究所(Catlog総研)」。2022年2月22日「猫の日」を記念し、Catlog総研では3日連続で新しいレポートを公開しています。最終日の本日は、Catlog Boardで取得したデータから、猫様の性別でのトイレ事情に違いがあるのかをみていきます。なお、本レポートでは、季節変動の影響を排除するため、2022年1月のデータを使用しています。
監修した専門家
株式会社RABO 獣医師
獣医師。救急医療を中心に従事し、災害医療にも携わる。宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長を経て、現在RABOに所属。Webメディア監修、獣医師や飼い主向けセミナー講演、メディア取材などでも活動。
犬の場合、オスは足を上げておしっこをするという、目に見えるトイレ体勢の違いがあります。では、猫様の場合はどうでしょうか? 視覚的には、明らかな違いはないように思えます。では、性別で何か違うことはないのか。Catlog Boardで取得できる様々なデータを分析し、みてみました。
様々なデータで比較を行う中で、明らかに性別間で差のある項目があることがわかりました。
1つは、排泄物重量(おしっこ+うんち)です。 オスメスそれぞれの排泄物重量を見てみると、個体差があるものの中央値でみると約4.6gの差があることがわかりました。オスの方がメスよりも排泄物重量が大きい傾向にあるようです。
もう1つは、排泄時間です。 こちらは、性別間で約4.5秒の差があることがわかりました。オスよりもメスの方が排泄時間が短い傾向にあるようです。
それぞれについて、もう少し詳しく見てみましょう。
まずは、排泄物重量の違いについて見てみます。
排泄物重量については、オスがメスよりも約4.6g大きいということがわかりました。このような差は、どうして生まれるのでしょうか。
1つ要因として考えられるのは、性別間の体重差です。
猫様の場合、性別間の体重差はオスの方が1kg重い傾向があります。体重が重いから、排泄物重量も大きくなる。というのは一見納得がいく説なのではないでしょうか。もちろん、これも間違いではないようです。
しかし、性別ごと、かつ体重別で排泄物重量を比較してみると、同じ体重でも性別によって排泄物重量に差が出ていることがわかりました。
体重が同じ場合でも性別で排泄物重量に差が出る要因としては、活動量や代謝の違いが考えられそうです。 この点については今後追加調査を行うことで、正確な要因がわかってくるかもしれません。
次に、排泄時間の差です。猫様の場合、性別で排泄時間(おしっこ+うんち)に約4.5秒の差があることがわかりました。
詳しく見てみると、体重が同じ場合でもうんちの場合は排泄時間に大きな差はなく、おしっこの場合にのみオスの排泄時間が長くなることがわかりました。これは、どの体重でも同様の傾向がみられました。
おしっこだけ排泄時間に差が出るのは、なぜでしょう。
実は、猫の尿道の構造は、オスとメスとでかなり違います。簡単に言うと、オスは細くて長く、メスは太くて短いという特徴です。タンクの水を太いパイプで排水するのと、細いストローで排水するのとでは、空になるまでの時間に違いが出るのと同じく、性別での尿道の構造に違いが排泄時間の差もたらすのではないでしょうか。
Catlog総研 研究員コメント 「うんちの場合、結腸から直腸を経由して肛門から排泄されます。うんちが排泄される仕組みはオスとメスで差はありません。そのため、うんちの時間にはオスとメスで違いがないと考えられます。一方で、おしっこは膀胱に溜められて尿道を通って排泄されます。オスとメスで尿道の形や長さが異なるので、おしっこの時間は異なるのかもしれません。」
性別による体の形状の違いが、健康データの違いにも繋がる場合がありそうです。今回の調査は猫様と暮らす皆様にとって実感の湧くものではなかったかもしれませんが、このように猫様の行動について調査し、理解していくことで、Catlog総研の研究がいずれイエネコに還元できる有益な情報にもなることを期待しています。
2022年2月22日「猫の日」を記念したレポーティングはこれにて終了となりますが、これからもCatlog総研は定期的にレポーティングを行っていきます。みにゃさまどうか楽しみにお待ちくださいませ!
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ライター
Catlog総合研究所
「Catlog」シリーズを利用いただいている猫様から取得・蓄積された行動ログデータや体重・排泄データなどを活用した研究機関。 猫様の行動や習性をよりよく理解するきっかけとなる研究データをお届けしてまいります。